大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

蚊に刺される・食われる(東)・かまれる(西)

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私:本屋さんで方言や国語学の本を目にすると、無意識にレジに向かっている。昨日、購入したのが神永暁(さとる)著・角川ソフィア文庫・悩ましい国語辞典。
君:簡単に紹介してね。
私:うん。139頁に図。滋賀以東の頻度は、くわれる>かまれる。全国的に、刺される、が多い事は書くまでも無い。数年前にデング熱が流行り、その時にネットで話題になっていたようだ。道浦俊彦TIMEも参考までに。
https://j-town.net/2014/12/12197920.html?p=all

https://j-town.net/2014/12/13197921.html?p=all


君:あら、東西対立が在りそう。飛騨は東側ね。くわれる。
私:まあ、確かにそう言えなくもないが、僕の結論としては全国的に「刺す」。広島を中心に「かむ」。それだけの事だろう。方言周圏論的には広島を中心に隣県に広まったが畿内には影響なし。従って東西対立は無い。
君:根拠は古語辞典ね。
私:うん。角川古語大辞典だが、他マ四「噛む」、他サ四「食ふ」、他サ四「刺す」、いずれも万葉からの和語動詞。細かい使い分けはあるが、割愛させていただく。「噛む・食ふ」の両語に意味として「(蚊が)刺す」の用例の記載無し。つまりは広島を中心として「かむ」が使われ出したのは近代語という事だよね。ただし「(蚊が)刺す」の記載はあった。徒然に文例があるし、「蚊は人をさしすせそ、人はかきくけこ(玉海集・二)」の文例がある。
君:玉海集は松永貞徳[1571?1654]江戸初期の俳人・歌人・歌学者。京都の人ね。
私:そう。昔から蚊は人を刺す、人は掻く。蚊に食われる、という言い方も近代語だろうね。
君:今日の結論は?
私:飛騨は文法の対立は西側(京都・奈良)。アクセント及び近世・近代の語彙は東側(東京)。なにせ日本の真ん中だから、上古・中世は京都の影響、近世・近代は江戸・東京の影響。天領だった事も大きいだろう。
君:飛騨方言は安芸方言の影響は全く無いという事ね。というか飛騨方言は西でもない、左でもないという事で、強烈な個性が欠けているのよ。足して2で割ったのが飛騨方言なのよ。ほほほ

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