大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

劣等感・私が飛騨方言を話さない理由

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タレントの有名人には例えば方言を売りにしておられますが、 ところが人の出身というものはプライバシーの一種です。 ですからそんなタレントさんでもご自身のご家族の事までを売りにされる事は 決してないでしょう。 つまりは芸人さんですから彼の方言は仕事上の事、芸であって、 本当のプライバシーは決して明かそうとなさらないのです。

さて田舎に生まれ育った人間は都会に出て、 まず劣等感というものを味わいます。 それまでの自身の生活は文明から遅れ、実家は貧乏で、しかも親には教養がなく、 また自分の肌の色は黒く、しかも言葉は訛っている。 こんな状況でどうして堂々と方言を話す気持ちになれましょうか。 よしんば見栄を張って生きる事はしなくても、少なくとも素性だけは知られたくない、 田舎の出であるこのどうしようもない劣等感は心の中に封印しておきたい、 こう思ってくると当然、人は方言を片言も話さなくなってしまいます。 実は私が飛騨方言を話さない最大の動機です。

私の生い立ちは実は修学旅行位でしか県外に出た事がなく、 そのような都会に住むようになった時に感じたのが、 うーん自分も出世したな、という事ですね。 ついこの間まではテレビでしか見た事のない都会の生活です。 町を行きかう人々が皆、自分より優れて見えてしまいます。 しかもその町は東京ではありませんでした。 実は私は社会人になるまで東京に一度も行った事がありません。 念願かなって、生まれて初めて上りの新幹線に乗り、 富士山を初めて車窓から眺め、東京駅に降り立った時、やはり感じた事は、 うーん自分も学生時代より更にまた出世したな。 いつわらざる心境です。山手線の車内、高校生と思しき若者らが、助動詞・ぜ、 の男性言葉で何気なく話しているのが、粋な言葉に響いたものでした。

ですから、田舎出身である事を堂々と明かして、しかも方言丸出しってのは、 本当につらいんですよ。これだけは勘弁してください。 若しも"お前、出身は田舎だろ、お国言葉を少し話してみろよ。"なんて 馬鹿にする奴がいたらぶん殴ってやるしかないぞ。

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