大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
ちゃんちんこ(=お座り) |
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私:昨晩は飛騨方言「ちゃんち(=お座り)」について擬態語であろう、とご紹介した。 君:「ちゃんち・ちゃんちんこ」は同類語であるのは良いとして、語源について議論するのは無益な事だわよ。要はどのような接尾語がつこうがつかまいが擬態語は擬態語。 私:当サイトは方言学を極めて大真面目にユーモアを交えて論ずる、という事をモットーにしているから、それではいけない。僕自身は「ちゃんちんこ」は品詞分解が可能で、従って語源もあると考えている。品詞分解くらいなら誰でもできるだろう。 君:つまりは「ちゃんち」+接尾語(辞)「こ」の撥音便。ははあ、全国の方言では接尾語(辞)「こ」についての記載があるのね。 私:いかにも。小学館日本方言大辞典だが、接尾語(辞)「こ」について十の例を挙げている。 君:なるほどね。内容は? 私:★初めに定めておくことの意。負けたら酒一生買うこ(石巻)。九時に学校に行くこだ(秋田)。あの山にはあがらんこ(山口)。★競争。鬼こ(鬼ごっこ、山口)。★状態を変えぬ事。乗り物に乗らんこでいたんじゃ(香川)。★小さなものへの親愛の情。てふこ(小さな蝶、八丈)。★名前の接辞。まさこ(政男、富山)。★場所。とうちゃんこ(香川)。★糸・縄を数える単位。ふたっこ縫い(新潟、静岡)。★ものを数える単位。志摩。★魚を数える単位。全国。★動物を数える単位。全国。 君:なるほど、飛騨方言「ちゃんちんこ」は状態を変えぬ事「乗らんこ」に通ずるものがあるわね。小さなものへの親愛の情、という意味も捨てがたい魅力があるわ。 私:そうだね。平凡でつまらない言葉など、この世には無い事がわかる。ただし、ここまでが前置き。僕が考える「ちゃんちんこ」の語源は異なる。 君:ほほほ、どういう事。 私:例えば僕の孫だが、一歳半で急速に日本語を覚えている。僕の手を引いて「だっこ、だっこ!」と言ってくる。 君:「抱っこ」は「乗らんこ」と同じで状態を変えぬ事という意味だとでもおっしゃりたいのね。 私:とんでもない。孫は「抱き続けろ」と言っているわけではない。 君:「抱いてください」とおじいちゃんに懇願しているのね。 私:いや、それも違う。孫は日本語を学び始めたばかりだが、用言という概念を理解して、しかもその命令形も理解した、という事だ。つまりは「だっこ、だっこ!」は「だけ、だけ!」という意味だ。 君:つまりは「だっこ、だっこ!」は「だく事せよ、だく事せよ!」の意味で使うという事ね。 私:その通り。つまりは孫はサ変動詞「だく事す」というものがあり、語幹「だく事」だけでも命令形の意味になる事を理解した。「ちゃんち」+「こ」に品詞分解できるが、「こ」は「こと事」の意味だ。 君:初めに定めておくことの意じゃないかしら。おじいちゃんなら当然、抱っこはしてくれるものとお孫さんは理解なさっているのよね。 私:「だっこ」の場合はそうかな。でも「ちゃんちんこ」の場合は「ちゃんちする事」の意味に限定される。何故なら「ちゃんちす為」は自動詞だからだ。ああ、語源学は面白い。 君:「だっこ」は他動詞につき、同じで状態を変えぬ事+事の二重の意味があるとでもおっしゃりたいのかしら。 私:従って自他の区別なく、飛騨方言「こ」には「こと事」の意味でサ変の語幹を生成する作用がある事に気づいてしまった。 君:確かにねえ。「にらめっこしましょ」は「めくらべ目比せむ」「にらむことせむ」だわよね。ほほほ |
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