大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
張り込む・自マ五(自動詞マ行五段) |
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私:飛騨方言で「はりこむ」といえば「はりきる・意気込む」と言う意味で、共通語の意味「大金を使う」というような意味は全く無いね。 君:でも同根の動詞なんでしょ。 私:勿論だよ。アクセントも「はりこ\む」で共通語アクセントと同じだ。 君:古語解釈的にはどうかしら。 私:時代の変遷がある。古くは他マ下二「はりこむ張込」で池ゃ器を水で満たす事、宇治拾遺、を始めとして、中世以降は一面に錦を張り付ける、網を広げる、等の意味でも用いられるようになる。ここで近世の大事件、他マ四「はりこむ張込」が出現し、相手を遣り込める、奮発して出費する、の意味が現れる。浪花聞書には、○はり込(コム) 衣類などりきみたる也又はづむともいふ、の記載があるようだね。これが現代語に通じるようだね。 君:つまりは江戸末期に「はりこむ(=はずむ)」で現代語と同じ意味であったのが、明治に飛騨に「はりこむ」という音韻が伝わり、いつのにか意味が変化してしまったという事なのね。 私:いや、そうじゃない。やはり、中央で「はりこむ(=はりきる)」の意味が出来て、これが地方に伝わったんだ。滑稽本・人情穴探意の裡外(1863‐65)に「何ぼう仕事を張り込んでも江戸ほどに銭を出さんさかいどうもならん」。これって明らかに上方の言葉だが、そのまま飛騨方言になる。つまり飛騨方言では「どんね(どんなに)仕事を張り込んでも江戸ほどに銭を出さんもんでどうもならん」。 君:なるほど。はりこむ(=はりきる)」は全国各地の方言になっているのね。 私:いかにも、左様でございます。しかも飛騨方言では体言「はりこみ張込」もよく使われるね。「熱意」という意味だ。この名詞「はりこみ」は飛騨方言では更にメタ言語化する。例えば「左七は毎日、せっせと方言記事書いて、はりこみなこっちゃ。」だが、「はりこみなこっちゃ」とは「精が出て、うらやましいことですね」の意味になっちゃうね。 君:ほほほ、ほめ殺しで使う事もあるわよ。「精が出るわね」を通り越して「よく続くわね、頭が狂っているわ」の意味なのよ。これがそれこそ第三段階のメタ言語化なのよ。ほほほ |
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