大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
はや(早くも、最早) |
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私:常套句になったが、方言は話してなんぼ、まずは動画をどうぞ。今夜の飛騨方言千一夜は副詞句「はや」のみなので、お急ぎのお方は 5:24 の部分へどうぞ。 。 君:飛騨方言、つまりは日常会話でよく使う副詞句であるし、その意味もよくわかっているのに、いざ共通語に訳そうとすると詰まってお仕舞いの点で、あなたなりにひらめいた事があるのね。 私:まあ、そんなところだ。それ以前の問題として、ユーチューブ登録させていただいているし、当動画にコメントを寄せていただくのが筋かとも思うが、僕としては木谷様のみならず皆様全員のユーチューブ発信を自然言語としてとらえて観察したいと思っている。勿論、小生とて当サイトに名前を掲示し、連絡先も明記して世界に発信しているので、或いは若しや、今回のような形の掲載はご遠慮ください、との連絡が先様からあれば、直ちに当サイトの記事は削除させていただこうと考えている。 君:前置きはそれくらいにして、飛騨方言副詞句「はや」がパッと共通語に訳せないカラクリを教えてちょうだい。 私:ほいきた。その前に飛騨方言「はや」だが、アクセントの核が第一モーラ、つまりは頭高「は\や」。そして私だけの癖かも知れないが「はや\ばやと」になってしまうが、共通語では「はやば\やと」。ところが共通語では「そのとき\どきに」のアクセントだから、本当に割り切れない気持ちがするね。 君:アクセントはいいから、「はや」は「早々と」の意味なのよね。 私:その通りなんだが、飛騨方言「はや」の意味は他にも「はやくも」「はやく」「はやいとこ」「もはや」等の意味に用いられ、挙句は感嘆詞「いやはや」の意味でも用いられるから共通語にはパッと訳せないという事なんだろうね。 君:同類語の短呼化でこれらが全て同音語「はや」になってしまったという事なのよね。 私:ああ、まさにその通り。ひどいのが「も\はや最早」の第一モーラ、つまりはアクセントの核、つまりは一番に大切な音韻を捨てて「は\や」の副詞としてしまった飛騨方言は、もはや尋常の前頭葉では理解が困難だ。 君:淋しい親父ギャグね。 私:もっとも、飛騨方言の肩を持ちたくなるのは古語に「はや早」があるからだね。 君:そうね。 私:国を離れて、はやいくとせか、50年だ。意味は「既に何年」。人生は短いね。 君:しかも古語「はや」には、まだまだ沢山の意味があるわよ。 私:その通り。たいていの古語辞典にあるのは副詞「はや早」の意味としては三つ、「すばやく」「はやくも・もう」「もともと・実は」。 君:これら三つの意味が飛騨方言「はや」でも用いられるのかしら。 私:いや、「はやくも・もう」の意味のみじゃないかな。飛騨方言の「はや」が古語の「はや」と完全に同じ意味である事は間違い無いが。 君:では例文をどうぞ。 私:既に挙げた。はやいくとせ。 君:なるほど、その通りね。「最早」もつまりは「今となっては既に」という意味で「早くも」と同じ意味じゃないかしら。 私:うん、確かにそうだ。要するに、事の実現が予想以上に早いさま、という事だね。となる、と途端に飛騨方言副詞「はや」の本質が見えてくる。つまりはある事柄を予想してもう少し未来の事であろうと思っていたのが現実の事柄である事に驚き、事の進展が想像以上に早かった事に対する驚きの念だ。これをアスペクトと言う概念と言わずして何という。こう考えると、アスペクトという語は実に使い勝手が良い。 君:三日かかると思っていたのに、実は二日目の今日と言う日にこのようにできちゃったのにはびっくり、と言うような意味よね。今日は副詞「はや」がアスペクトである事に気づいたのね。おめでとう。 私:有難う。今夜も方言の神様と握手が出来た。じゃあ、例文と行こう。「はや、おいた。」 君:ふふふ、わかるわ。意味は「もういやだ、やめちゃうぞ。」 私:その通り。「明日まで頑張ろうと思ったが、とても無理、今日でおしまいにします。」という事だね。 君:「娘は、はや、はたち」こんな例文はどうかしら。 私:「何時までも子供のままかと思っていたのが、こうやって既に二十歳とは」。 君:そして、お互いに、はや、還暦過ぎてまって。 私:そやさ。そやけど、はやこんな時間やで、お互い、きちんと寝にゃ。そしゃな。 君:そやな。そしゃ。 まとめ 飛騨方言「はや」は過去を振り返る副詞です。英語の already(adv.) i.e., before expected timeです。「あのころはもっと時間がかかると思っていたのに、いやあ、もうできちゃったのね」という事で、未来の自分(実は現実)が過去の自分を振り返る副詞です。だからアスペクトはテンスじゃないんですってば。つまりはテンスの差がアスペクト。 |
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