大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
飛騨方言名詞・いめ |
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佐七:飛騨方言で古くは、夢の事を、いめ、と言っていたようだね。古川町の方言資料があるが。ところで、あなたは名古屋の出身だ。使うかい。 家内:いいえ、夢は、ゆめ。使わないわ。 佐七:これがまた面白い。ちょいと訛っただけじゃないんだよ。 家内:音韻、あるいは語源という意味よね。 佐七:実は両方さ、ははは。まずは種明かしだか、いめ、は古語だ。しかも上代語。語源学では、寝目・いめ、つまりは寝ているのに見ている、という意味から来たというのが定説だ。 家内:ほほほ、面白い事。昔の方もお考えになって。寝ているのに見えるものなあんだ?答えは、ゆ・め。いぬ・寝ぬ・自ナ下二は古文の最重要単語よね。 佐七:ああ、そうだね。寝る、の意味で古文では他に、いねつむ・稲積む、いをぬ・寝寝、さぬ・寝ぬ、ぬ・寝、ぬる・寝る、などがあるようだね。尊敬語では、おおとのごもる、以外になんと、およる・御寝る、というのもあるようだが。 家内:いぬ>ぬ>ぬる>ねる、と変化して現代語になったのでしょ。 佐七:だろうね。さて、いめ>ゆめ、と変化した理由はわかるかい? 家内:ア行がヤ行よね。わからないわ。飛騨人が上代から、いめ、と言い続けてきたのであろう事のほうが理解しやすいわね。 坂口安吾も知っていたのかしら。熱烈な飛騨愛好者よ。 佐七:僕が突拍子もない説を考えた。拗音説。いめ>ゆぃめと変化したのだが、言いにくいのであっというまに、ゆぃめ>ゆめ、と更に進化したのじゃないかい。 家内:ほほほ。飛騨では上代以後に、ゆめ>ゆぃめ>いめ、という音韻の変化があって先祖がえりした可能性もあるわね。 佐七:あーあーっ、人をからかって。飛騨人は古代からいめ、という言葉を用いていたのさ。坂口安吾が泣くよ。僕と坂口安吾の飛騨古代ロマンスをけなさないでくれ。 家内:失礼しました。 佐七:ははは。言ってみるものだった。さて、寝るという動詞だが、いぬ>ぬ、と変化した理由があろう。わかるかい。 家内:語頭の母音が脱落する事は珍しくはないでしょう。 佐七:確かにそうだね。ところが、もうひとつの僕の珍説は同音衝突だな。犬が寝ている、は、上代では、いぬいぬ。 家内:いぬいぬ、の意味が通りにくいから、いぬ・ぬ、になったとでも。信じる方はいらっしゃらないでしょうね。ほほほ。これだけは恥ずかしいからお書きにならないでね。 |
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