大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
かまつち(赤土) |
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私:家内から、飛騨方言について一体全体、毎日のように書く話題があるのか、と何度となく尋ねられている。 君:ほほほ、いくらでもある、とお答えかしら。私も心配よ。無理して書くのは止めてね。 私:無理は全然していない。楽しいから書く、誰のためでもない、自分の為に書く。熱心な読者がいらっしゃる事も薄々感じている。この場を借りて御礼申し上げます。前置きはさておき、赤土(あかつち)の事を飛騨方言では「かまつち竈土」。竈は「かまど」と読む。 君:「かまど」は和語ね。 私:うん。角川古語大辞典をみたが、「かまど」はあるが、例えば「可麻度(万葉集892)」、「かまつち」も「かまどつち」も記載は無かった。 君:角川古語に「あかつち」の記載は? 私:ある。天平の正倉院文書から。つまりは「あかつち」も和語。 君:若しかして平城京の赤い土壁があかつち? 私:勿論だよ。赤土の色の本体は酸化鉄。粘り気があるので土壁になる。祭礼の時に道を清める意味で撒いたりする事もある。飛騨地方の祭礼でもそうだ。また赤土には同時代の同意語がある。「に丹」「はに埴」「はにつち埴土」「はにふ埴生」。 君:「あをによし青丹吉」は「よしの吉野」つまりは奈良にかかる枕詞ね。空の青と壁の赤かしら。 私:それは違う。「あをに青丹」でひとつの意味。実は奈良山で採れる青黒い土。つまりは単なる語呂合わせ。 君:言葉遊びね。枕詞というのはそういうものね。 私:そういう事。逢坂の関は実は浮気の意味とかね。ぶっ 君:「はに埴」「はにつち埴土」「はにふ埴生」は「はにわ埴輪」と同類語でいいのよね。 私:その通り。こちらは正に赤いもの。 君:古語はわかったから、続いては方言ね。 私:うん。「かまつち竈土」は全国共通方言。北海道・沖縄を除く全国各地の方言だ。古語に由来する言葉に違いないが、角川古語大辞典には記載無し。当惑しています。 君:ほほほ、でも古い言葉には違いなく、全国で音韻変化しているのでしょうね。 私:勿論だよ。がまつち、かまつっ、かまちっ、かまべと、かなべと、かなんべと、以上かな。 君:「べ」が気になるわね。 私:古語に戻ろう。「へ竈」、つまり、なんと「竈」は「へ」とも読むし、「かまど」とも読むのであった。ぶっ 君:左七の語源探索も底なし沼ね。 私:うん。面白くて仕方ない。数分前までは知らなかった事だ。 君:子供の頃を思い出すわね。かまつち(赤土)で作られたかまどでの煮炊き。お袋の味。ノスタルジアだわ。 |
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