大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
けなるい(=うらやましい) |
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私:飛騨方言けなるい(=うらやましい)だが、五十年以上も前になるかな、高一になり古語辞典を持つようになり、形口「けなりい」、自ラ四「けなるがる」を発見して、なるほどね、と思った事を思い出すな。 君:つまりは人生も晩年でやたらと青年時代が懐かしいというわけね。 私:うん。高校三年間と教養部の二年間、合計五年は要は好きな事を学べばいい訳だ。学部ともなると違う。学生と言う仕事だ。以来、今日まで仕事、仕事。こうやって国語学をかじる事が息抜きというわけ。 君:今日も面白い発見があった? 私:ははは、あったなんてもんじゃない。まずはその高一の時に、ははあ上古には形動ナリ「けなり」があったのだろうけど高校生相手の(ちっぽけな)古語辞典ではオミットされているのか、と思ったんだよ。 君:その考えはいつまで。 私:実は一時間前まで。今夜も何かひとつは文章を書かねばと思いつつ、眠くはなるし、たまにはパスしようかと思ったが、角川古語大辞典をペラペラとめくっていて、いやあ驚いたのなんの。眠気が吹っ飛んだ。 君:あら、どうして。角川古語大辞典の内容を全国の皆様に簡単にひと言でお伝えしてね。 私:うん。当然すぎるが形動ナリ「け異」の記載はある。変わっている事を愛でて羨ましいなと思う気持ち、文例は万葉、宇治拾遺、古今、源氏他多数。これが近世語〔けなりい・けなるい〕になる辺りも詳述してある。ここまでは良し。 君:ほほほ、それから地獄を見た、と御気持ちはわかるわよ。もう一つの形容詞、形シク「けし異」の存在に気づいたのでしょ。 私:はい、そうであります。 君:形シク「けし異」は違っているからトコトンいやだな、という意味。そこでで出来た言葉が「けしからぬ」。その一方、形動ナリ「けなり異也」は違っているからとっても素敵ね、という意味。つまりは形シク「けし異」と形動ナリ「けなり異也」が反対語という事を左七は一時間前まで知らなかったという事を全国の皆様に正直にお伝えせねば、と決心したという事なんでしょ。 私:いやあ、よくわかってくれてるね。その通りだ。古語の重要単語は全て理解していると思い込んでいたが、如何に自分の知識がデコボコなのか、今日は骨の髄まで学ばされた感じだった。実のところ、大学受験では国語の苦手意識に悩まされ続けた。正直にお話をすると、本番でなんとか結果が出せたのは偶然だった。僕に国語学を語る資格は無い。 君:重要単語の形シク「けし異」は覚えていないで、飛騨方言に残っているという理由だけで形動ナリ「け異」だけを五十年以上も忘れないでいたのね。 私:つくづく思う。僕って高一の時に方言に恋をしてしまっていたんだ。要は方言バカ。しかもその理由はたったひとつ、大西村というド田舎出だから。カタツムリの柳田先生! 君:方言に恋するのも結構ですが、古典文学に恋してビシバシお読みなさいよ。まずは重要単語を攻略すべきだわ。 私:まあ、ぼちぼちね。 君:それって、いいえ・そんなことしません、という意味だわよ。 私:今、源氏をかじっています。 君:そんなんじゃダメよ。 私:膝栗毛も読み始めた。 君:そんなんじゃダメよ。 私:方言学に戻ろう。全国で話される「けなり異也(うらやましい)」と「けし異(けしからん)」、この二つの語群、これがまたまた凄い世界なんだぜ。がはは 君:あら、そんな事は私は知らないわ。 私:つまりは国民の大半がご存じない。先ほどは方言の神様にあれこれ、お話を聞いてきた。内容はいずれまた。がはは 君:罪のない事ね。けなるいわ。ほほほ |
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