大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
とおし(=連続して、切れ目なく) |
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私:方言学というのは机上の空論ではない。フィールドワークが大切。まずは動画をご覧いただこう。 。 君:純朴な飛騨の老人の自然言語だから、つまりはこれこそが左七が当サイトで紹介している飛騨方言という訳ね。 私:その通り。日本列島の中央に位置する畿内文法+東京アクセントの不思議な方言。それはさておき、本日の話題は尾高アクセント「とおし」。副詞句だ。動詞を修飾する。 君:うーん、見つからないわ。 私:無理もない。うどん屋亭主が、ほんのひと言おっしゃった言葉。注文からうどんが出されるまでがわずか一分、「それを可能にする為には常に(=とおし)うどんをゆでているのです」とおっしゃったひとこと。動画の 4:35 の部分。 君:なるほど、ほんの一言ね。 私:語源については書くまでも無い。自サ四「とほす通」の連用形「とほし」。副「トーシ」は飛騨方言の意味と同じで全国各地の方言になっている。「期間を通して」などという表現は共通語そのもの。この場合、アクセントは頭高である事は共通語と同じ。重要なのは広辞苑他国語辞典に別の意味、例えば「お通し(=コース料理の最初の一皿)」があるが、副詞句「とおし通(=常に)」の記載は無い事。中央ではかつて使われていたが、いまや死語と言う意味だね。従って「トーシ」は全国共通方言の扱いになっている。 君:つまりは「とほし」は古語辞典に記載があるのよね。 私:ああ。ひとつは「とほしうま通馬」。宿場で馬や駕籠を乗り換える事なく、同じ馬・同じ駕籠で目的地までいく事。 君:なるほどね。他にもあるの? 私:岡場所の隠語だね。 君:岡場所? 私:ははは、吉原は知っているね。 君:江戸幕府公認の公娼館、というか町ね。 私:そう、公認。職業に貴賤は無い。ただし江戸には非公認の町も結構あって、それが岡場所だ。つまりは一般名詞。「とほし通」の意味はわかるよね。 君:わからないわよ。 私:安心した。実は僕もつい、数分前までは知らなかった。要は「とほし通」は「ノータイム」。これならわかるかな? 君:今夜は艶っぽい話題ね。わかるわよ。「時間制限なし」。 私:そう。遊び放題・払い放題という事を意味するようだ。急に興味が湧いて調べた。「とほし」とは「午前から午後にまたぐこと」、「昼から夜にまたぐこと」、「契約した時間の二倍、ないし三倍の時間を遊ぶ事」、以上の意味だそうだ。 君:あらいやだ。だから全国共通方言「とおし」は江戸時代の遊郭が語源という意味かしら。 私:その可能性は無きにしも非ず。想像する事も書く事も、これはもう、表現の自由です。ここは小学生を対象とした「よい子の方言広場」ではない。 君:いやだ、からかわないでよ。 私:脱線しすぎたかな。でも一言、言わせていただきたい。二つの手元資料、角川古語大辞典と講談社江戸語大辞典の内容をご紹介しただけ。江戸の庶民の言葉の知識は方言学には必須だ。ここで突然に話題転換、「島原ことば」を知ってるかい? 君:島原半島、長崎県ね。 私:違う。「島原」は西本願寺の西、下京区にあった日本最古の遊郭。天正17年からだという。「ありんす」言葉、「なます」言葉等々。地方出身の娘の方言矯正プログラム、これが島原ことば。遊女の言葉が実は京文化に影響を与えたという歴史がある。「とほし」は江戸語だ。 君:なるほどね。 私:話はまた変わるが、僕は実は前立腺癌で、かれこれ十年以上、内分泌療法を行っている。 君:内分泌? 私:癌の餌、テストステロンを根絶やしにする治療。お陰様で経過は順調だが、言い換えれば左七は女性ホルモンだけで生きているので身も心も女なます。私、今日のお話なんかでは欲情しないのでありんす。ほほほ 君:癌! 私:そう、癌だ。生きるために男を捨てた。でもで経過は順調。私ども夫婦と娘二人、一家が勢ぞろいの時は「さあ、女子会!」が我が家の合言葉。ぶっ 君:そんな冗談をとおし話しているのね。左七が実はスーパーウーマンだったとは。ほほほ |
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