大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

よき(斧)

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私:今夜は何を書こうかと思案して、直ぐに思いついた。ははは
君:木こりさんの商売道具。つまりは民俗学のお話ね。
私:その通り。
君:語源が判ったのね。
私:ああ、わかった。全国共通方言だ。方言学辞典にも古語辞典にも記載がある。
君:ではまず答えからお願いね。
私:いや、まずはヒントから行こう。
君:意地悪ね。
私:そもそも、飛騨方言よき、は斧(おの)の一種にて、やや小さめ。大きな木を切るための斧と違い、腰に差して傾向する程度の小型のもの。
君:それがヒント?
私:ああ、ヒントだ。使い道を考えてみてくれ。
君:小さな木を切りはらうための小さな斧という事よね。
私:その通り。答えは、大きな木を切るために藪に分け入るために使う小さな斧だから、よき。
君:ピンと来ないわ。
私:障害物たる藪をよける為の斧。つまりは、よき、とは、よける、の意味なんだよ。
君:ほほほ、わかったわ動カ上二・よく「避」の連用形よき。これが語源なのね。
私:左様でございます。さあ、ここからは日本語の歴史の時間だ。
君:なるほどね。活用は古くは上二段活用、平安時代に四段活用の形も現れ、中世ら下二段活用の形が現れて、以来それが普通となる、と言う歴史。
私:そう。室町時代から、よける、になって現代に至る。日葡辞書には Yoguite の記載もある。つまりは中世から近世前期までは「よぐ」と語尾を濁音でいう形もあった。
君:一般の古語辞典にはそこまでの記載は無いわね。
私:以上は角川古語大辞典。座右の書として毎日、楽しんで読んでいる。
君:よき、のアクセントは?
私:平板で決まりだな。なにせ動詞の連用形を体言としてとらえた言葉だから。
君:あなたの事だから途端に造語機能が無いか、調べ始めたでしょう。
私:えっ、バレたか。抜く・抜ける、のく退・のける、付く・付ける、届く・届ける、つなぐ繋・つなげる、にぐ逃・にげる、等々。他にもまだありそう。
君:抜き、付き、つなぎ、辺りは現代語の体言ね。ほほほ
私:こんな程度では卒論テーマにはならぬだろうが、中高校生の言葉遊びには、まあ適当といってもいい題材だろうね。時代による活用の変遷を調べさせる、とか。
君:よきにとりはからへよかし。ほほほ

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