大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
あさんず |
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つい三日前ですが、あさんず、という言葉を発見しました。勿論、飛騨の言葉です。きっかけはこの数日ですが書下ろし・人物のコーナーで飛騨の出身で唯一の方言学者といってもよいでしょう、元富山大学教授・都竹都年雄先生の御出身地・下呂市萩原町尾崎について調べていたところ偶然にもこの言葉に巡り合った、というわけです。前置きはさておき。 萩原町尾崎は飛騨川の西岸にあり、対岸の上呂を結ぶ一本の橋があるようです。これが、あさんず橋。岐阜女子大学情報が大いに参考になると思います。浅い水の橋、あさみずばし、の母音の欠落及び撥音便から出来た言葉のようで、列記とした飛騨萩原の言葉である事は書かずもがな、ここで国語学上あるいは方言学上にて大変に興味深い事といえば、この、あさんず、という音韻は飛騨方言どころか、若しかして日本語としても唯一の音韻である可能性が極めて高い、という事でしょう。実はこの事を実証するために手前の資料を丹念に調査するのに三日三晩かかりました。今のところ、この、あさんず(橋)のみです。尤も、私自身、十年前には飛騨の音韻については書きつくしたかな、などと思って昨年まではこれで一区切りと思っていたのですが、考えが甘かったようです。三日三晩の間に参照した手元資料は、言海、(天下の)広辞林、各種古語辞典、邦訳日葡(にっぽ)辞書、平凡社・日本歴史地名大系「岐阜県の地名」、角川日本地名大辞典21・岐阜県、等ですが、日本歴史地名大系と角川日本地名大辞典は各々が数千ページですから本当に大変な作業でした。それでも、ともかくなんとか目を通したのです。結論ですが全国広しといえども、あさんず、は飛騨萩原にひとつあるだけでしょう。やっほう 数学の素数の証明のような難題といってもいいのでしょうが、あさんず、という音韻がある事は実証されましたが、これが唯一の音韻である事は実際には証明は不可能です。この際は、ほぼ間違いない、という結論にしておきましょう。続いてはネット検索になりますが、全国の河川の名前で浅水川は三つです。また、あさんず、の言葉もひとつありましたが、浅渦の転にて付注にて、あさんず、と書かれた情報がありました。 あさんず、は飛騨萩原尾崎の固有名詞なので、ネットで、あさんず、をキーワードに検索しても、あさんず橋、あさんず会館、あさんず通り、介護施設あさんず、この四つに集約されてしまいます。 あさんず、という語彙が全国的に見ても唯一に近いことば、という事の意味は、まずはその響きに既に表れています。日本語らしからぬのです。より具体的に、外来語らしく響くのです。フランス、アガパンサス、ボン・サンスのチェック柄、等です。第一にアサンスと言えば英語です。つまりはセント・アサンスホテル・ロンドン St Athans Hotel, London。 飛騨にある地名その他で、一宮、国府、丹生川、等は実は全国津々浦々に点在する名前ゆえ固有名詞としての価値は、といえば、それほどでもない・かろうじて固有名詞だがどちらかと言えば一般名詞、という代物ですから、飛騨で唯一どころか日本で唯一、という事は世界で唯一といってもよい、あさんず、という言葉にはとんでもない価値がある、と言えますね。 ただし、電話で昨日に聞き取り調査したところ、JA萩原では、むしろそのユニークすぎる響きを嫌って日本語らしく、あさみずしてん、と呼ぶ事にしていらっしゃるそうで。これにはサイト管理人は二度びっくりでした。 |
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