大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
花もち |
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私:年末という事でNHKニュースで高山市の近隣農家での花もち作りを報道していた。方言ネタは尽きない。どうして「餅花」と言わないのだろう。盆栽の如く枝ぶりの言い株に紅白の餅を巻き付け花に見立てるのだから餅花でいいと思うのだが。 君:あらら、花もち、つまりは食べるものであっているわよ。正月の間は飾って楽しんで桃の節句になるころには剥ぎ取った後に揚げて、つまりはアラレにして御菓子になるのだから。最終品が花もちなのよ。 私:いや、それは違う。それを言うなら「もちアラレ」だ。「花もち」は文字通り、紅白の華やいだ餅という意味だろう。 君:ほほほ、それこそ名解答だわ。玄関先でパッと目につく飾り、なんと枝には華やいだ餅、という事で、つまりは盆栽の主人公たる飾り、すなわち餅を表現している言葉が「花もち」なのよ。 私:全国の方言を見てみよう。こんな言葉を一体全体、方言辞典には収録しているかと思ってみたら、やはりあった。小学館日本方言大辞典全三巻だが「花もち」があり、方言量は1。正月の飾りの意味で用いる地方は富山県砺波と飛騨の二か所のみ、静岡県庵原郡では氏神祭りで餅数個を竹の枝に刺して門口に飾る。もう一つ別の意味があって、葬式の日の餅(千葉県香取郡)あるいは法事のお供え(新潟県糸魚川)。同辞典には「もちばな餅花」の記載もある。こちらは「花もち」とはガラリと変わっていて、方言量は1だが、植物名(ははこぐさ豊後、ざいふりぼく兵庫県有馬、むしとりなでしこ山形県鶴岡市)という事でまちまちの植物の名前に用いられるケースと御菓子のアラレの意味で長野県上伊奈郡と下伊奈郡及び香川県。 君:「花もち」も「餅花」もアラレの共通項があるけれど、飾りの意味では「花もち」しか用いられないし、植物名としては「餅花」しか用いられていないのね。 私:「花もち」は飾りが主な意味だから「花もち」と「餅花」に共通項は無いとも考えられるね。「花もち」は飾りあるいは食べる餅、そして「餅花」は植物名かアラレ。 君:「餅」そのものの方言量は多いわよね。 私:小学館・標準語引き方言辞典のお出ましだね。ざっと三十個ほどある。幼児語といってもいいだろうが「あっぽ」の系統が多い。飛騨でも「あっぽ」は用いる。飛騨方言には「かちん」があるが、死語に近いだろう。「おかちん」とも言う。 君:「かちん」の語源は。 私:「かちいひ搗飯」だ。「かち」は「かつ搗(臼で搗(つ)く事)」他タ四の連用形。「かてて搗、加へて」は副詞句、ある上に更に加えて好ましくない場合に用いる。そして「かちん」は室町時代の女房詞。これがどうして飛騨にあるのか、私には不明。cf. 小林千草・女ことばはどこへ消えたか?・光文社新書 pp209 君:理由は簡単よ。あなたが令和の時代にネット発信するためにあったのよ。 |
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