大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
はしゃぐ(=乾く) |
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私 先ほど発見したのだが、全国ならびに飛騨の方言となっている「はしゃぐ」についてお話ししよう。 妻 「騒ぐ」という意味で全国各地に面白い表現があるのね。 私 いや、違う。実は方言での意味は「かわく・かわかす」だ。 妻 ふうん、「騒ぐ」とは全く関係のない話なのね。 私 いや、それがそうでもない。実は古語に「はしやぐ」四段自動詞があって。意味は「からからに乾く」なんだ。但しこの言葉の記載があるのは岩波だけ。引用は夜鶴庭訓抄(やかくていきんしょう)平安時代末期だ。ところが江戸前期の俳書・毛吹草に「うかれさわぐ」の意味が加わるんだ。つまり安土桃山までは「かわく・かわかす」の意味だった。明治の国語辞典・言海には「はしゃぐ」は「かわく」の意味の記載しかない。昭和になっても「はしゃぐ」の意味だけの記載の国語辞典ばかりだね。但し広辞苑には死語「はしゃぐ(乾く)」の記載があった。広辞苑は古語辞典としても少しは使える辞書だね。かくして「はしゃぐ(かわく)」は方言と呼ばれるようになったわけだ。 妻 ふうん。それだけを調べるのに幾つもの辞書をせっせと調べたのね。いったい幾つ? 私 ははは、さっと40位だな。コツコツと辞書を買い集めたという事。 妻 まあ、道楽にしては安上がりの部類ね。全国の方言で「かわく」の意味の方言は、やはり、「はしやぐ」の系統が多いのね? 私 そうだね。ざっと百個ほどあるが、「かっぱしゃぐ」「はさぐ」「はしく」「はしける」「はしなぐ」「はしゃーぐ」「はしゃう」「はしゃく」「はしやく」「はしゃぐ」「はしやぐ」「はしゃげる」「はしらげる」「はしらく」「はしらぐ」「はしわぐ」「はつく」「はっしゃぐ」「ははえる」ざっとこんなところだ。北は青森から九州まで、全国の方言になっている。 妻 岩波古語辞典に記載があったから良かったものの、もしそうでなかったら、多分、記事は書いていなかったわね。語彙というか、あなたは何が何でも語源探しで、要は古語を見つけたいのでしょ? 私 ははは、そうだよ。そして、なんといっても役に立つのが三省堂の「現代語から古語を引く辞典・金田一春彦著」だが、ここで古語として紹介してあるのは「からぶ乾」「からめく枯」「かる涸」「ひる乾干」「ふ乾干」。残念ながら「はしやぐ」の記載が無い。金田一先生の完敗で、大野晋先生に座布団一枚だ。東京書籍の「語源海・杉本つとむ」にも詳しいが、木が乾燥する事を「はしやぐ」と言っていて、この乾燥した木に火をつけるとメラメラ燃え立つので、その様から連想して、浮かれ騒ぐという意味が江戸時代に発生したんだ。毛吹草の一首だが 声のみや 雨にはしやぐ ホトトギスやがて、近松や式亭三馬に「はしゃぐ」の言葉が現れる、この時点で「はしやぐ」つまり四拍から「はしゃぐ」つまり三拍になっちゃったんだ。 妻 飛騨方言で「はしゃぐ(乾燥する)」は使うの? 私 いや、正直言うと、聞いた事もなく、従って話したこともない。僕にとっては死語といってもいいね。 妻 そんな事、調べてどうするの?あなた本当にそんな事が面白いの? 私 僕はね、語源が好きなんだよ。「はしやぐ」これは平安時代の四段自動詞だ。でもどうしてそんな動詞がてきたのだろうね。四拍もするのだから複合動詞なのかな、もしかして「はしやぐ」の語源は「はし端」名詞+「やく焼」四段動詞だろうか、渇いた木なら端から焼けるだろう。「はし端」も「やく焼」も共に万葉集にある言葉だよ。「まつげ睫」の語源は「ま目」+連体「ツ」+「け毛」が語源だ。感動するでしょ。要はこのサイトは飛騨方言の文字の博物館に語源の説明があるという事。もちゐぬことのはこそおおいに習ばむとすなれ・・学芸員の僕は一人で大はしゃぎという訳だ。ははは 妻 Never Marry a Curator.(ひとりはしゃぐ)悲しき学芸員( and not Railroad Man 鉄道員)のあなた、はしゃぐの結構ですが、「はしゃぐ」の語源は「は」「し」「や」「く」の可能性もあるわよ。 |
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