大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

ほおば寿司

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私:今日は「朴葉寿司」にまつわる語彙のお話を。
妻:ふふふ、その前に読者の皆さまにお伝えする事があるでしょ。
私:そうだね。連日の如く書籍を買い漁っているが、遂に手に入れた小学館・日本方言大辞典(全三巻)。山星書店、名古屋じゃ老舗の古本屋、場所は鶴舞公園、FM愛知の道路向かい。
妻:大学病院の近くだから、知ってる店?
私:知ってるなんてもんじゃない。大学院入試の語学試験対策のためドイツ語指南本を幾つか買い漁ったが、そのひとつがここで買った郁文堂の教本。ロベルトコッホが結核菌を発見し1905年にノーベル賞を受賞した物語の逐語訳だ。実は試験本番でズバリ同じ問題が出た。一時間の試験だが5分で解答し、受験者でひとり満点だった。僕は受験の神様ととてもご縁がある。
妻:院試の自慢話なんていいから、日本方言大辞典の朴葉寿司のお話を始めてちょうだい。
私:ほいきた。大辞典に記載があるのは「ほーばめし」福井県・飛騨、「ほーばまま」富山・石川、「ほーばずし」岐阜県郡上、「ほーはずし」奈良県吉野郡、「ほーばもち」飛騨、以上だ。
妻:あら、朴葉寿司って郡上と奈良県で飛騨は朴葉飯と朴葉餅なのね。
私:残念ながらと申しますか、そういう事になる。つまりは飛騨における朴葉寿司の歴史なんてあってないようなもの、最近の高山観光ブームにあやかって作り始められた飛騨では戦後の食べ物という事になるね。子供の頃に食べたような気がするが。
妻:でも朴葉飯と朴葉餅は飛騨オリジナルなのよね。
私:ありがとう。傷心の僕をいたわってくれて。確かにその通り、それだけが救いだ。大辞典によれば朴葉飯は田植え時期の間食「あさこびり朝小昼」用。朴葉餅はつきたての餅をくるみ、長持ちさせるようにした保存食。だが・・覚えが無いんだ。蛇足だが、朴葉飯と朴葉餅は青葉を用いる。「ほーばみそ」の記載がないので、あらら不思議と思い、 同辞典を調べたら、飛騨の方言として「こっぱみそ」「みそやき」「やきみそ」を発見、つまりは若しかして朴葉味噌すら近世どころか現代の言葉だろうか?
妻:よかったわね、いい本が手に入ると正確ないい文章が書けて。
私:むしろ怖くなるね。今後なにか資料が手に入るたびに今まで考えていた事がガラガラと崩れてしまうような気がして。
妻:ほほほ。あなたらしくない。あなたはなにせ山星書店様の本を再び手に入れたのよ。あなたひとり満点だった院試の験担ぎをなさいませ。もうこれ以上の方言資料 なんて出て来やしないわよ。

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