大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
捨てる |
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私:今日は飛騨方言の動詞「捨てる」他下一について。 君:どういう事?それ、方言じゃなくて共通語よ。 私:つまらない話題かも知れないが、飛騨方言には違いないだろう。岐阜県南端に住む僕だが、先だって 2020/10/15 だがオートバイで上宝(かみたから、新穂高温泉、中部山岳国立公園)へ紅葉を見に日帰りソロツーリングをした。ところが、古川で給油後にガソリン現金カードを捨ててきた。 君:カードを使ってから捨てたって!!正気の沙汰? 私:飛騨方言では「紛失する・なくす。落とす」の意味で「捨てる」って言うんだよ。だから「捨てる」は飛騨方言だ。 君:なるほど、古川で給油した時に現金カードを使った事はよく覚えているけれど、帰宅後に探しても見つからない、大慌てで信販会社に電話を入れてカード再発行手続きを行ったという事だったのね。 私:その通り。大切なものだけに、使用後は必ず革ジャンパーの内ポケットにしまって発進する癖のはずだが、未だに何故、紛失してしまったのか、さっぱりわからない。年は取りたくないね。 君:高い勉強代ね。でも悪用はされなかったのでしょ。 私:有難い事に悪用はされていなかった。給油したスタンドはよく覚えていたので電話もしてみたが、見つからなかった。飛騨市の警察署にも紛失の電話をしたが、結局は見つからなかった。 君:再発行代は幾らなの。 私:1100円。二週間ほどかかるそうな。 君:現金カードを無くす人なんて聞いた事ないわよ。あなたって、実は頭が悪いのね。 私:認めざるを得ない。でも、こうやって記事がもう一つ書けた。 君:或いは読者の皆様は、作り話だろう、とお思いになるわよ。有り得ない話で。 私:全国の皆様、どうか信じてください。先だっては飛騨へ一人旅をして本当にENEOSカードを無くしてしまいました。カードは既に無効ですので使おうとお思いにならないでくださいませ。 君:国語辞典を見たけど確かに「捨てる」の意味は幾つかあるけれど「紛失する」という意味は無いわね。 私:国語辞典には「捨てる(用が無い物を投げ出す)」と書かれているね。思わず汗。だから「カードを捨てる」と言えば一般的には「こんな失効カードなんかゴミも同然だ」という意味になっちゃうんだよね。 君:角川古語大辞典はどうなの。 私:ほいきた。「すつ捨」他下二だね。なんと10の意味の紹介があった。これらがなんと簡単に一言、要らないので手放すの意味。とほほ 君:古代から大切なものをうっかり捨てた人なんていらっしゃらなかったという文献的な証左よね。 私:でも飛騨方言には「捨てる(紛失する)」があるから飛騨人には僕のお仲間が多いのだろう。 君:精神的には立ち直っているようね。上宝の紅葉はどうだった? 私:素晴らしかったね。実は空は一面の霧だった。穂高、笠ヶ岳の山頂は霧に覆われて見えず。気温は15度程度。風を切って走ると小肌寒い感じだが、冬支度の身なりだから大丈夫だった。それでも赤、黄、緑、黄緑が織りなす全山燃ゆる紅葉のパノラマの景色。正に幽玄の世界。しっかりと脳裏に焼き付けられたよ。 君:良かったわね。ところで「わざと捨てる」は飛騨方言では何だっけ。 私:「ほかる」他ラ五(他動詞ラ行五段)だな。角川古語大辞典には記載がある。「ほかる放」他ラ四。投げる。放置する。「ほかる」は東海・北陸の方言だ。これは「ほかす放下」他ラ四(近世俗語)から来ている言葉だろう。文例としては「ほかいて」つまりサ行イ音便が見受けられる。「ほかる」他ラ五の場合は「ほかって」つまり促音便になるが、御存じ飛騨はサ行イ音便地方、この辺りの誤用から方言動詞「ほかる」が発生した可能性が無きにしも非ず。 君:国語辞典に「捨て」+名詞の言葉がざっと数十あるけど、すべて「わざと遺棄する」意味。驚いたわ。人はいろんなものを用が無いという事で捨ててしまうのね。 私:そう言えば飛騨地方は「てまう」表現の地方だな。だから「捨てる」というよりは「捨ててまう」という事が多いね。ついでながら文献資料には「すてる」の音韻変化で「してる」「ひてる」の死語の記載があったが、僕自身は聞いた覚えが無い。 君:飛騨方言では「うしなう」他ラ五のかわりに「うしなかす」「うしなえる」、「なくす」他ラ五のかわりに「のうならかす」、「なくなる」のかわりに「のうなる」と言うわよね。実は私もこの間・・・ほほほ。 おまけ 皆様は紅葉に当たり年と外れ年がある事をご存知でしょうか。当たり年とは五つの条件(★夏が暑く日照が長い★夏に十分な雨が降る★昼夜の気温差が大きい★湿気が少なく乾燥★台風の直撃が無い)が当てはまる年です。2020年は当たり年です。岐阜県にも紅葉スポットは多いのですが、ブッチ切り第一位の人気が中部山岳国立公園・新穂高ロープウェイの上宝です。新穂高温泉、栃尾温泉、福地温泉、新平湯温泉、いわゆる奥飛騨温泉郷に一泊がお勧めです。行動する町医者、余暇で飛騨中をオートバイにて走っています。今後は観光情報に力点を置きましょう。乞うご期待。 ![]() |
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