大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

たけうま(竹馬)

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私:年を取ると妙に幼い頃が懐かしくなるね。今日は「たけうま」の話にしよう。
妻:女の私は竹馬では遊ばなかったわ。
私:一般的には男児の遊びだな。我が家の孫も遊びだすかも知れない。
妻:そうね。買ってあげたらどう。
私:ああ、飛騨方言の「たけうま」の語彙はどんなのがあると思う?
妻:そんなには多くないと思うけど。二つか三つ程度かな。全国ともなると沢山あるのでしょ?
私:ああ、そうだ。ひとつの共通語の言葉、 より厳密にはひとつの概念、に対して地域に何種類の方言があるか、これが「方言量」だ、「たけうま」はざっと全国で100前後だが、飛騨方言では3。
妻:方言量が地方では少ないのに、全国集計すると多いのは何故なの?
私:それはとてもいい質問だ。幼児の遊び事などは方言量が多い、という事実がある。古語にある名詞を舌足らずの子供達がかってにどんどんと変えてしまうからだよ。子供が使う体言は方言量が多い。逆に大人しか使わない体言は少ない。
妻:なるほどね。それで飛騨方言の3とは?
私:「たけうま」「さがし」「しゃがし」だ。
妻:「たけうま」は共通語だから方言とは言わないんじゃないの?
私:まあ、そう言わずに。どの古語辞典にも「たけうま」の事が詳しく書かれてるぜ。


妻:あらら、現代の竹馬とは違うわね。これじゃあ詳しい説明が要るわよね。
私:子供の遊び以外に生活・行商の具、等複数の意味で使われた面もあるね。
妻:「たけうま」はともかく、「さがし」って何なの?「しゃがし」は単に訛っているだけなのよね。
私:いい感してるね。今日の重要語彙は「さがし」だ。私はこの方言の語源を古語辞典の中で探しに探し、ついに発見。
妻:親父ギャグはいいから、語源は何?
私:「さぎあし鷺足」だ。どの古語辞典もあったよ。語源の説明は不要だろう。どの辞典も竹馬の事とだけ記載してある。
妻:へえ、あなたも「さがし」って言ってたの?
私:僕の村、大西村、は高山市の南隣だが使った事は無いね。聞いた事もない。方言辞典には古川(現飛騨市)との記載だ。斐太高校の同級生で古川出身はワンサカいる。今度の同窓会が楽しみだ。
妻:話に花が咲く同窓会だから、大抵、 聞きそびれるわよ。そういう事は 今すぐメールで聞くのがいいのよ。
私:そうだね。ところで日本方言大辞典を読むと古語「さぎあし」の系統がずらりと出てくる。地域は省くが、さぎだし・さぎゃし・さげーし・さごあし・さんあし・さんがーし・さんがいち・さんがえし・さんがし・さんがち・さんがつ・さんぎ・さんぎあし・さんぎし・さんぎす・さんぎゃし・さんぎょーあし・さんぎょーし・さんげあし・さんげー・さんげーし・さんげーしょ・さんげーち・さんげーしょ・さんげーち・さんげし・さんげんあし・さんし・さんやし・さんよし・しゃがし・しゃぎあし・しゃぎし・しゃごあし、ざっとこんな感じだ。
妻:なるほどね。
私:話は誠に尽きない。実は古語辞典で竹馬の意味でもうひとつ「たかあし高足」を発見した。こちらも結構、説明は多くて農具、遊具、劇場大道具、等、意味は多彩。
妻:あなた、若しかして・・
私:その通り。全国の竹馬の方言は鷺足の系統、竹馬の系統、高足の系統に三分類される。更には「ゆきあし」「ゆきあしだ」「ゆきうま」「ゆきげた」「ゆきぼく」の方言の記載があったので、古語辞典で「雪」で始まる単語を先ほど全部、調べた。残念ながら、雪系統の竹馬の方言は5個も あるのに、対応する雪が語源の古語は発見できなかった。
妻:無い事を証明するのは骨が折れる仕事だわね。でも古語になくても何故、竹馬が雪に関係するか説明は要らないわね。
私:ああ、最後は日葡辞書のお出ましだ。Sagui の記載はあるが、鷺足の記載は無い。Taqevma 竹馬の記載はあった。高足の記載は無かったが Tacaaxida の記載はあった。やっほう、気分は最高だ。
妻:それって若しかして高足駄よね。やっほう。
私:浮かれついでに、古語辞典に「たけうま」の意味の言葉をもう一個、発見した。
妻:えっ、まだあったの。すごいわね、あなた。
私:「ちくば」があった。いやあ、びっくりだ。竹馬の時(幼少期)[今昔1ノ25]
妻:古語辞典じゃなくて、まるで現代語辞典ね。ほほほ

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