大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
うさぎ(兎) |
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私:十数年間、飛騨方言を独学してきたがつい先ほど世紀の大発見をした。 妻:ほほほ、大げさな。相変わらずいつもの調子ね。ウサギちゃんをテーマに何週間もコツコツと調べものをしてきたの? 私:いや、違う。瞬殺だ。つい数分前までは知らなかった事なんだよ。あれっ、と思って数冊の辞書を調べるのに時間は不要だ。 妻:ほほほ、そもそも「うさぎ」ちゃんの古語って何? 私:ははは、いい質問だ。ヒントは干支。 妻:あっ、そうか。「う卯」よね。古代の言葉ね。それがいつのまにか「うさぎ」になっちゃったというお話ね。「う」+「さぎ」のお話なんでしょ? 私:ははは、ひっかかったぞ。実は「うさぎ」のほうが古い言葉だろうね。そもそもが「卯」は東の意味だ。これに元々あった「兎」を当てたのじゃないかな。漢和辞典を先ほど見て、これも大発見、音読み「ウ」は35個もあるのに、訓読「う」はたったの三個。兎・鵜・もうひとつは秋冠に鳥だ。 妻:ふうん。秋冠は珍しい漢字ね。変換できないのね。ついでだから教えて、古語を。 私:ははは、いいぞ。「しまつどり島ツ鳥」だ。鵜の異称だよ。「沖ツ白波」ツ「島ツ鳥」なあんちゃって。 妻:ほほほ、ギャグね。ところで「うさぎ」が古代の日本語である根拠は? 私:ははは、古語辞典に書いてある。万葉集にたった一句だけ、うさぎを読んだ句があるんだ。ここ 妻:でも、「うさぎ」は「をさぎ」でした、なんて知識は、賢い受験生なら知ってらっしゃるかも。大発見なんて言わないわよ。あなた、ペラッペラの人間よ。 私:ははは、言いたい事を言うがいい。では驚くべき衝撃の事実を語ってやろう。この広い日本の国で、多分、私しか知らない事を。 妻:そりゃ知るわけないわよ。飛騨方言がなんぼのものですか、と、読者の皆様がお感じになるはずよ。 私:いさぎよく飛騨方言の事は百歩ゆずろう、まあ聞いてくれ。日本方言大辞典だが、約20万の言葉を収載している超一級資料だ。「うさぎ」を意味する方言は全国に幾つあると思う? 妻:多分、百前後かな。 私:違うんだ、これが。たった十個前後。「うさ・」で数個・おさぎ・おしゃん・かやきり・ごぞだんじり・とこなつ・みこども・「みみ・」で数個・やまのて。以上だ。因幡の白兎じゃないが太古から全国津々浦々にウサギがいたのに、たったこれだけの方言しかない。 妻:なにをつまらない事を言ってるのよ。和語の方言量は少ないとか、今まで散々、このサイトで書いていたくせに。 私:ふふふ、ひっかかったぞ。という事で僕がビックリしたのは飛騨方言における「うさぎ」の方言量だ。土田吉左衛門・飛騨のことば(辞典)によれば、・・うさい・うさげ・うしゃぎ・うしやげ・おさき・おさぎ・おしゃげ・・多くは死語だろうが、飛騨のことば(辞典)は昭和34年あたりの高山市の方言一万を記載した飛騨方言研究の超一級資料なんだよ。 妻:古語の「をさぎ」が全国広しと言えども戦後の高山市にだけそのまま「おさぎ」で残っていたり、飛騨の方言量が極端に多いのも不思議ね。和語なのにね。 私:ああ、不思議だ。不思議すぎる。僕もそれなりに飛騨方言の語彙は約一万ほど調べてきたと思うが、生活語彙の調査は最近、始めたばかりなんだよ。 妻:生活語彙?なにそれ? 私:民俗語彙とも言うね。はじめに共通語ありき、の発想だ。現代語[うさぎ]の事を全国各地の表現ではなんというか、という事。話題は尽きないね。 妻:死ぬまでやる気ね。なんちゃって太宰様、方言と心中なさいませ、ほほほ。中断して再開するなんて自殺未遂もいいとこなのよ。それにしても万葉集の恋の歌、素敵ね。官能の太宰文学だわね。 |
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