大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 

けりをつける

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寝ようと思っていたところで、先ほどひとつ文章を書いて今日はおしまい、と思ったのですが、話題をまたひとつ発見してしまいました。テレビのクイズ番組に如何にも出てきそうな問題ですが、「けりをつける」の「けり」って何?という問題ですが、答えは俳句から来ている慣用句、という事らしいですね。

目から鱗、と申しますか、どうして今までこんな簡単な事に気づかなかったのだろうと思っています。俳句という答えでまるわかりですが、過去(回想)の助動ラ変「けり」ですが、別名が「詠嘆のケリ」とか「気づきのケリ」とか、受験であれこれ覚えたと思いますが、そう言えば how to 俳句というものを私は今までやって来なかったのでした。私の尊敬する恩師は名大医学部名誉教授、雅号もお持ちで、俳句をたしなんでおられます。つまりは俳句の先生が出来の悪い生徒さんにお教えなさる事は、まずは季語を選び、そしてケリをつけなさい、という事だったのでした。

ついでですが、日常語の「そうだっけ?」とか「そうだっけ!」も実は「さうらふたりけり」の意味のようですから、結構、立派に助動詞ケリは現代に生きているんだなあ、と思います。

実は以上が前置きで、飛騨方言では絶対に、と言ってもよいのですが、「そうだっけ?」とも「そうだっけ!」とも言いません。東京訛りのキザな言葉にしか響かないからです。同じ理由で飛騨方言では「そうだ。」も、ましてや「そうだぜ。」も絶対に用いません。「そうや。」「そうやぜ。」なら飛騨方言として合格です。

結論ですが、たった今ですが、飛騨方言からはケリ活用は完全に消滅している事に気づいてしまいました。「昔、男ありけり。」つまりは受験で覚えた伝聞「ケリ」ですが、飛騨方言では例えば「昔なあ、男がおったんやとよ。」があります。これを分解すると
「おり」+「たり」+接続「の」+「であり(=じゃ=や)」+副詞「と」+詠嘆「よ」
になりますから、ははーん、わかったぞ、昔から飛騨方言には俳句の世界の「詠嘆のケリ」も「気づきのケリ」も、そして古文全般の伝聞「ケリ」も、全く存在しなかったようですね。

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