大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
女房詞(にょうぼうことば) |
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私:質問、そもそも女房詞とは? 君:室町時代の宮中の女官達の言葉遊びから生まれたのだわ。語誌の研究者なら知っている事、恵命院権僧正宣守「海人藻芥(あまのもくず)」1420の記載が最初。 私:そう、室町時代の京都。平安時代に飛騨工が都から言葉を持ち帰ったわけではないわけだ。飛騨方言にも丁寧語・美化語たる女房詞が生きているね。 君:例えば。 私:「くもじ」は飛騨の人なら誰でも使うのでは。漬物の事。赤飯の事を「おこわ」と言うね。切り餅の事を「おかちん」と言う。 君:「くもじ」と言えば「にたくもじ」よね。 私:そう。漬物をグツグツと煮て、雑炊のような、お汁のような形でいただく。 君:他ナ上一「にる煮」の連用形からすれば「にくもじ」で良いような気もするわね。 私:うん。これは現代の飛騨人の言語感覚ではないね。そして若しかしたらその他の可能性もあるんじゃないかな。 君:どういう事?女房詞を飛騨にもたらしたおかたはどなたかしら? 私:女房詞は全国各地の方言になっている。「くもじ」と言えば金沢方言だよね。商標にも使われる。つまりは北陸伝い、白川郷あたり経由で高山に届いた言葉じゃないのかね。「またじ(片付け)」も金沢から飛騨に伝搬した言葉ではないかと直感している。 君:つまりは石川方言で「にたくもじ」が生まれ、それが飛騨に伝搬したのかしら。 私:可能性は無きにしも非ず。当たらずと雖も遠からず。いや、近いと言えども当たらずかな。ははは 君:こうやってあなたは無邪気な言葉遊びを楽しんでいらっしゃるのよね。 私:まあ何とでも言ってくれ。ところで「くもじ」の語源は何だと思う。 君:さあ。 私:京都の雅な言葉が更に女房詞に化けたという事だから多分、「くもじ」の語源は「こうのもの香物」。これが京言葉で「おこうこ」になる。「こ」を一つとって「くもじ」にしたのだろう。カ行のお遊び。 君:こじつけね。 私:まあ、何とでも言ってくれ。実は「く」は「くき茎」の事でもある。大根、蕪、これらの茎と葉で作る漬物が「おくもじ」だ。 君:なるほど。「くきのもの」だから「くもじ」ね。それは説得力があるわ。 私:飛騨方言では「こうこ」は実は音韻変化している。答えは「かっこ」。 君:なるほど。確かに。だから飛騨方言「かっこ・くもじ」は共に漬物の雅語という訳ね。 私:これが「にたくもじ」ともなると別だな。変性しているので食べられない、煮れば食べられるだろう、という事でゲテモノに近いからなあ。若狭湾のヘシコに近い、というべきか。 君:切りがないわね。「おこわ」「おかちん」の語源は? 私:前者は「こはいひ強飯」、後者は「かちいひ堅飯」からだな。和語だね。 君:他にないかしら。 私:うーん、パッと思いつかない。時間切れ。現代語「ひもじい」も実は女房詞。語源は「ひだるし」。女房詞は結構、現代語に生き延びている。続きはまた明晩。 君:ねまし。ほほほ |
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