大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

美濃方言・おんさい、飛騨方言・きんさいに関する一考察

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岐阜県に美濃加茂市がありますが、中山道の宿場町としても有名です。 美濃加茂市は飛騨川と木曽川が大合流するところに位置し、その眺めは絶景です。 つまりは美濃加茂市は京阪神あるいは名古屋の言葉が、 ひとつは飛騨川沿いに北上し飛騨に伝わるとともに、 またひとつは中山道沿いに東進し信州に伝わる、まさに文化の分岐点にある町なのです。

その美濃加茂市で話されている言葉に、おんさい、があります。おいでなさい、が訛った 美濃加茂弁という事です。一方、飛騨方言では、おいでなさい、は、きなさい、が訛った、きんさい、です。

美濃加茂市民の方々の、おんさい、という言葉に対する熱い思い入れは、中途半端ではないと思います。 隣接市との境の国道わきに美濃加茂市が、
"またおんさい 美濃加茂市"
と野たて大看板に書いておられます。 さらには、"おんさい岐阜テレビ"という公共放送があり、 "おんさい祭り"(岐阜県恵那市明智町)があり 、 "おんさい安八朝市"(岐阜県安八(あんぱち)郡安八町氷取 安八町役場広場)が開催されます。 そして"またおんさい 美濃加茂市"の大看板の中山道宿場町。

つまりは、岐阜県の方言といっても、おんさい、は市町村にまたがり広く美濃地方に充満し、また、美濃の各地で熱烈に 愛されている言葉なのですが、がしかし飛騨の人には、ピンと来ない言葉なのです。 重要な点は、おんさい、は濃尾平野に見られるのみならず、 岐阜県恵那市明智町のおんさい祭りに見られるごとく、木曽川をのぼっているという点です。 がしかし、同語は飛騨川をのぼってはいません。

また、飛騨の人が熱烈に、きんさい、を愛しているわけではなく、飛騨には、同名の公共施設・機関名、祭り、朝市、看板、ともに ないようです。問題はおんさい、と、きんさい、の境目ですが、 やはり、中山七里あたりでしょうか。 あるいは、飛騨金山、焼け石、七宗町あたりか、微妙なところです。下呂市に"またきんさい 下呂市"という看板が若しあれば、 おんさい、と、きんさい、の境界が考えやすいと思いますが、実際にはありません。否、私自身がよく美濃加茂市から高山までの 間を車でドライブしますが、"またおんさい 美濃加茂市"の大看板以外は見た事がないのです。

話が突然変わりますが、きんさい、でネット検索しますと、 これはたちまち全国区の言葉になり、ヒット数は、おんさい、の比ではありません。 勿論、きんさい祭りもあります。 つまり全国的には、"おんさい"を愛する岐阜県美濃地方以上に、"きんさい"を愛する地方が多いのですが、 残念ながら飛騨は番外です。しゃみしゃっきり。

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