信州大学教授・丹羽一彌先生著、日本語動詞述語の構造、笠間書院、を昨日から読み始めました。
同大学の大学院の講義を製本化されたそうです。教養部の学生さんには
ちと難しい内容かな。いやあ、結構面白いですよ。
飛騨方言がネイティブの方は思わずはまってしまいます。
実は飛騨方言のサ変動詞・せる、ですが、瀬戸市方言・稲沢市方言・犬山市方言であった、
という事で表がありました。
表 4-6 pp.68
未然 連用 終止 連体 仮定 命令
瀬戸市 セ シ セル セル シヤ セヨ
稲沢市 セ シ セル セル シヤ セヨ
犬山市 シ シ シル シル シヤ シヨ
どうですか。大変にショッキングな内容でしょう。
この表からいくつかの結論が導かれます。
- 飛騨方言のサ変動詞・せる、は実は美濃との共通の言葉だったのです。
- 飛騨・瀬戸・稲沢で二段化なるもなんと犬山方言は一段化しています。
- 飛騨方言の仮定形はなんと、せや、と言う事であるいは若しや最も古形のようです。
- あるいは逆に飛騨人のみ、仮定形をヘンテコリンに発音するようになったのでしょうか。
- 飛騨・瀬戸・稲沢・犬山、の共通項は名古屋、つまりは、せる、のルーツは尾張弁なのでしょう。
- 濃尾平野では既に、サ変動詞・せる、は消滅しているのであろうが、どっこいまだ飛騨方言に生きています。
- 筆者はサ変動詞・せる、を飛騨俚言とかつて考えていたが明らかに間違いであり、
中部、特に東海地方の古い言葉である。
- 君、俚言という言葉をゆめゆめ気安く使うことなかれ、かつての広域方言であった可能性がある。
つまり、俚言なんてそうあるもんじゃないぞ、あなたが俚言かもと思ってた言葉は実はあなたの地方が一番田舎という証明なのよ。
この事は実は本居宣長が玉勝間で述べています。
- 俚言という言葉は従って慎重に用いねばなるまい。佐七もよくよく考えてから書きましょう。
- このサ変動詞の活用から明らかでしょう、飛騨方言は尾張方言の落とし語ではないでしょうか。