大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 飛騨の言霊

斐太人

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私:毎晩のように方言辞典や古語辞典で遊んでいるのだが、いやあ、知らなかった事が多いな。
君:ほほほ、知らなくてもいい事が多かったのね。
私:お言葉ですね。でも、その古語辞典の記載に間違いを発見したよ。
君:ほほほ、そんな事あるわけないわ。
私:論より証拠だ。古語辞典を見てごらん。「ひだひと飛騨人」の単語が記載されている辞典もあるでしょ。
君:ええ、確かにあるわね。私達、飛騨の出身者にとっては名誉な事だわよね。
私:間違った漢字じゃだめなんだよ。
君:「飛騨」のそもそもの最も古い漢字表記「斐太」じゃなくては、という意味ね。
私:その通り。吾らが高校・岐阜県立斐太高等学校のように「斐太人」で表記していただかないと。
君:ほほほ、あなたはひだびとじゃなくて、「ひまびと暇人」ね。
私:ははは、またからかいやがって。
君:私にはあなたの心がわかるのよ。高校名もだけど、万葉集の事を言いたいのでしょ。
私:そうだ。つい先程、ネット検索したら第11巻 歌番号2648番歌に
云<々> 物者不念 斐太人乃 打墨縄之 直一道二
と記載してあるじゃないか。
君:かにかくに/ものは/おもはじ/ひだひとの/うつ/すみなは/の/ただ/ひとみち/に。
私:おっ、さすがにすらすらと訓読が出来るんだね。
君:だって、…恋の歌だもの。
私:レファランス協同データベースによれば近畿大学中央図書館と山口大学教育学部に資料がある、という事も判明した。ところで、恋の歌だって??飛騨工の仕事ぶりは素晴らしい、彼らの正確な技は尊敬に値する、という意味かと思っていた。
君:そのような意味は当然あるのだけれど、それを踏まえて飛騨工が打つ墨縄の一本の線と同じように、あなた様一筋に、一途に私はお慕い申し上げます、という意味なのよ。
私:えっ、正しくはそういう意味だったのか。では、詠み人知らずとはなっているが、これは女性が男性を慕う歌だね。
君:万葉の歌はほとんどが(言外に)恋の歌。「男性が女性を慕う歌でもよいかとも思っていたけれど」というあなたの言葉、聞き捨てならないわね。男という生き物は浮気性だからひとりの女性にいれあげるなんて事はしない、とでも言いたそうだわよ。
私:いやぁ、それもお言葉だな。好きな人が出来れば、その人ひとすじになるのは男女、関係ないじゃないか。ただし、一旦、恋に陥るや、あなた様思って命がけ、という感情は、男性よりも女性のほうが強く抱く感情かな、と思って出た言葉、それだけの事なんだよ。
君:ほほほ、あなたは「云<々> 物者不念」の箇所から察するに、詠み人とは性が異なるわよ。あなたは男だから、つまりは詠み人は女性よ。
私:えっ、どうして。
君:ちょいと考えるのよ。簡単な理屈じゃない。「あれやこれやゴチャゴチャと余計な事は考えないで」という意味だから。
私:?
君:つまりは「斐太人」でも「飛弾人」でも、どうでもよくないかしら。問題は歌の意味よ。「斐太人」が正しく「飛弾人」は間違い、という拘りを捨てて、歌の意味を楽しめば、それは女性の考えなのよ。
私:そう言えば「飛騨工」「飛騨の工」の揺らぎがあるね。どちらでも良い、って事なのかね、世間的には。
君:そうよね。
私:漢字テストではアウトだろ。そんな根性では漢検は覚束ないような気がするけど。
君:それはまた、世界が異なるのよ。世界が。
私:な/かにかくに/もの/おもひ/そ。おのら/高校/なる/真名/正しき/は/斐太/にて/飛弾/に/あらじ/ 目指せ漢検満点
君:あが/きみ/こそ/かにかくに/もの/おもひ/さしまさ/ざら/まほし/けれ。あが/おもひ/斐太の(学年一番)/ただ/ひとみち/に/ ・・いやーん
まとめ 岐阜県立斐太高校は岐阜県では県立岐阜高校に次いで二番目に古い高校で、古代の文献に初めて「ひだ」の記載があった時の漢字表記「斐太」が使われます。飛騨の表記は後代の当て字です。

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