大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 飛騨の言霊

飛山濃水、飛山、岐山

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言霊(ことだま)という言葉はあまり日常では使われませんし、ましてや言霊思想ともなると日常生活では無縁のようにも考えられます。それでも言語は万物の霊長・人間だけが持ち、たったひとつの言葉、例えば合格・優勝・婚約、で人間は幸せになる事が出来るのです。さて表題ですが、読みは飛山濃水「ひざんのうすい」、飛山「ひざん」、岐山「ぎざん」です。どれもおめでたい言葉と言いたいところですが、それがそうでもなくて。

飛山濃水の言葉ですが、これは岐阜県をたたえる言葉として良い意味で使われることがほとんどだと思います。岐阜県は木曽三川、つまり木曽川・長良川・揖斐(いび)川の三つの大河が流れる平野部・美濃地方と北アルプス(正式名は飛騨山脈)と白山連峰を有する飛騨地方の二つの地方が明治時代にひとつの県になったわけですから、岐阜県を地政学的に一言で表せば飛山濃水です。



この「岐阜県民の歌」ですが、山紫水明・飛山濃水の岐阜県をひたすらたたえる歌ですが、今の学校教育では取り上げられているのでしょうかね。私は岐阜県高山市の(旧大野郡久々野町立)大西小学校(既に廃校)の出身ですが(1961-66)、音楽の時間は言うに及ばず毎日のように大声で楽しく歌っていたので、私の小学校時代のソウルミュージックと申しましょうか、今でも完全暗記しています。畏るべし初等教育、恩師に感謝。また小学校の思い出と言えば東京オリンピックと岐阜国体です。この国体に合わせて実は「岐阜国体賛歌」というのが出来て、これも完全暗記しています。・・「岐阜国体賛歌」が作られたそうですが、どんな歌ですか?「岐阜国体賛歌」は、当時の県民の意識高揚に大きな役割を果たし、昭和40年岐阜国体を大いに盛り上げる一助となりました。国体賛歌を合唱することは、当時の県民が一丸となって国体に参加できた証だったと思います。・・以上、2012岐阜清流国体サイトから
 
作詞:永味敬弘(公募)作曲:中田喜直(作曲家)
歌詞:黄金色に太陽は燃え 青空に聖き旗樹つ
   その日若人はとび魚となり かもしかとなり 泳ぎ走り跳び
   その技を競い その秘めたる力を試し 未来へ挑むこの夢この希望 
   岐阜 岐阜 我らが 国体
この歌も大声を出して毎日、歌わされたので、未だに自然に口ずさむ事が出来ます。多分、生涯、忘れないでしょう。小学校時代の大切な思い出、とも言い換えられます。

さて、実は飛山「ひざん」となると、少しニュアンスが違います。実は、あまりおめでたい言葉ではないのです。少なくとも飛騨の人達にとっては。山の国飛騨ですから、全国の皆様は飛山の名前を冠した名前が幾らでもありそうにお感じでしょうが、実はそうではありません。この飛山という言葉は岐阜県下呂市金山町、つまりは飛騨の入り口にある金山町にある国道41号線の「ドライブイン飛山」の固有名詞といってもよいのですが、つまりは平成の時代に東海北陸道(岐阜県を縦断し名古屋と富山を結ぶ高速道路)が出来てからは、観光バスの流れが白川郷へも高山市へも一足飛びの東海北陸道にに集中してしまってからは「飛山」に観光バスは一台も止まっていません。昭和の時代には国道41号線とて名古屋と富山を結ぶ大動脈であったのですが、いまや完全に生活道路、沿線のドライブインがドタバタと平成時代に閉店し、そのなかで「飛山」だけが青息吐息で細々と営業しておられる現況では、飛山「ひざん」のイメージは、斜陽・不景気・負け組・たそがれ、のような意味しかなく、従って飛騨でニュービジネスといっても飛山はむしろ忌み言葉に近いようなイメージです。

続いては岐山「ぎざん」に参りましょう。この言葉も岐阜県民のイメージとしては県立「岐山高校」を示す固有名詞といってもよいでしょうね。さきほどネット検索しましたが、この高校に関する情報ばかりでした。一件だけユニーク情報があったのですが「ホテル岐山」がヒットしました。さて岐阜市の山と言えば全国の皆様のイメージとしては岐阜金華山でしょうね。織田信長の城です。ところが金華山は金華山、岐阜市民のおかたも金華山の事を岐山とはおっしゃらないのではないでしょうか。そして、その岐山高校ですが、岐阜市でも国公立大学への進学が百人以上の県下ではトップクラスの進学校ですが、岐阜で進学校の雄と言えば県立岐阜高校を示します。私の出身・名古屋大学医学部の同級生・恩師・先輩・後輩で岐阜県出身者は(ほぼ)全員が岐阜高校卒と言っても過言ではなく、残りわずかに大垣北高、多治見北高、中津川高程度です。というわけで岐山の言葉にはどうしても鶏口牛後のイメージがつきまとうのです。その他大勢の県立高校はともかく、岐山高校卒の方々に限っては岐阜高校卒者に対して複雑なお気持ちでおられるであろう事は想像に難くありません(freedom of speech)。

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