大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
連声 |
戻る |
私:方言学が国語学の下位分類である事は書かずもがな、ただし「方言でナマラナイト」を引き合いに出すまでも無く、音声学・音韻学が重要。という事で今夜は連声(れんじょう)。 君:簡単にひと言で説明をお願いね。 私:うん。教義と広義がある。狭義は高校古典で習った隅田川。「こんにった舟を急ぎ」、何故そんな音韻になるのだろう、高校生の左七はとても不思議に思った。 君:ほほほ、今になって謎が解けたのね。 私:入声音だ。 -t の多くは室町時代は子音尾張で発音されていた。日葡辞書の例では発熱は fotnet、フォトネットの発音だった。「今日は」は「コンニッ」+「ウァ」、つまりは「コンニッウァ」これが転じて「コンニッタ」。高校の古文では、この程度の授業はしてほしい。 君:まあまあ、授業時間は限られているのだから教師の身にもなってよ。ところで連声が生ずるたったひとつの原因があるわよね。 私:そう。漢語。つまり外来語。和語ではない。上古にはなかった音韻。当時の中国語がそのような音韻だったから、これを日本語に取り入れた結果。具体的には -t, -m, -n で終わる漢語が母音の前に来ると生じる現象。飛騨は大半が浄土真宗なので、正信偈は庶民に親しまれているが、法藏菩薩因位時、つまりは法藏菩薩が因位「インニ」なさった時、の例など。和讃によくある例。 君:狭義は漢語ね。では広義は? 私:リエゾン。子音の挿入。和語や格助詞ヲ・ハ・ヨなどでも使われ出した。隅田川はその例。つまり隅田川は狭義かつ広義という、連声としては最高の例。 君:リエゾンが広義の連声となると例は多いわよね。 私:そうそう。例えば、あきさめ秋雨、はるさめ春雨、こさめ小雨、ひさめ氷雨、むらさめ村雨、きりさめ霧雨。 君:村雨って何だっけ。 私:群雨の事。ザッと降ってサッと止む事。ながあめ長雨の逆。どうしてナガサメにならないのだろう。不思議だ。 君:大雨、小糠雨、俄雨、天気雨、涙雨、一雨、通り雨、等々、リエゾンにならない事の方が多いわね。 私:正にその通り。和語は連声するのは稀。これって国語の法則といってもいいんじゃないの。そんな法則なければつけちゃえ、左七の法則。 君:ほほほ、無価値だわ。 私:言いたきゃ言え。苦労して飛騨方言のリエゾンみつけたぞ。トウモロコシ。 君:ポップコーン?? 私:飛騨方言では「トーナ」。語源、わかるよね。 君:ええ、「トー」は唐、「ナ」がわからないわ。 私:「トーナ」の語源は唐粟、つまりは「タウ・アハ」、これの連声で「タウ・ナハ」、そして「タウナ」から「トーナ」で飛騨方言の出来上がり。室町時代の全国版方言一大事件だな。一冊の本になり得る。当サイトでは繰り返し紹介している。 君:ポップコーンなんかどうでもいいわよ。隅田川、子をさらわれた母が旅路の先で知る絶望、狂女と息子・梅若丸の涙をそそるお話よね。と言っても、人としての悩みは母も父も関係ないわよね。クスン |
ページ先頭に戻る |