大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
オノマトペの型 |
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私:飛騨方言のオノマトペといっても「そうそと」位しかパッと思い浮かばないね。 君:「そうっと」という意味よね。 私:ああ、若い人は多分、使わないだろう。 君:飛騨の言葉「そうそと」から類推できるけど、オノマトペは共通語表現が大半とは言え(例、ちくちく、ずきずき)、方言はあるのでしょ。 私:それについての研究は多いね。東北地方に多いようだが、詳しくは知らない。 君:どうして「そうそと」などと言う音韻になってしまったのかしらね。 私:ははは、調査済み。答えは用意してある。ところで早速に本題だが、オノマトペの型で圧倒的に多いのが二モーラの反復、ABAB型だ。語調がいいからだよね。 君:「そうそと」「そうっと」共に四モーラよね。 私:その通り。「そうっ」で三モーラだから、これを反復すると「そうっそうっ」で六拍につき、まことに言いにくい。 君:ましてや「と」を付けて七拍では更に言いにくいわね。 私:昔は「そうっ・そうっ・」などと八拍でやっていたと思うかい。 君:そういう質問は、つまりは答えは「否」と教えているようなものよ。 私:確かに。実は「そうそと」は飛騨以外に、新潟・富山・愛知・和歌山などで話される。浄瑠璃・薩摩歌に出てくる単語なので、つまりはこれがルーツかも知れないね。要はお囃子(はやし)の言葉。「そうそと」の型分類はABAB型とは言えないよね。 君:ABAB型+「と」かしら。 私:いや、それは違う。「そう/そ/と」の四拍なのでABC型だね。 君:ABCの三つの語根ね。 私:その通り。 君:語根の数だけど、さすがにABCD型は無いのね。 私:その通り。「すってんころりん」という言葉があるが「すっ/てん」+「ころ/りん」でAB型+AB型だろうね。あるいは「がらん」はAん型という。「きょとん」もAん型だろう。「すってんころりん」はAん型+Aん型かも知れない。 君:「すってんころりん」はABん型+ABん型よ。 私:確かにそうかもしれないね。いずれにせよ「ん」は接辞だ。語根ではない。 君:「すってんてん(ABB)」とか「ころころりん(AAB)」とも言うわね。 私:お結びころりんの昔話だね。それと赤ちゃんって「いないないバア(AAB)」を本当に喜ぶね。 君:そう、その通り。あれって不思議よねぇ。という事でいつものパターン、孫の話。 私:人は皆、自分の子が赤ん坊の時の事すら忘れてしまう。孫を見て子が小さかった頃、つまりは夫婦が恐る恐る子育てをした若かった頃を思い浮かべる。ところで・・ 君:ところで? 私:古語辞典でABC型を見つけた。たった二つ。空耳アワー、はじまりはじまり。 君:パッと思い足せないわ。 私:「ころく」カラスの鳴き声だ。今は「かあかあ」だけど。 君:思い出したわ。語源は「ころ自」(自然の成り行き)+「く来」、つまりは「(望みもしないのに)勝手にやって来る」から来てるのよね、 私:もうひとつは「ひとく」ウグイスの鳴き声。 君:ほほほ、こちらも語源があるわ。「ひと人」+「く来」。つまりはカラスの場合と逆で、ウグイスが奇麗に泣いていると「人が集まって来る」から来ているのよ。 私:現代ではウグイスは「ホー・ホケキョ」だが、「法、法華経」つまりはお坊様のお言葉から来ているからだね。江戸時代からだそうだ。 君:「法、法を聞け」とも言うわよ。「ころく」「ひとく」「そうそと」がABC型でオノマトペでは珍しい型という事なのよね。 私:「ころく」「ひとく」は奈良から江戸時代まで。明治になって話されなくなった。若しかして「そうそと」のみが全国で唯一のABC型の可能性がある。飛騨方言万歳。がはは 君:人形浄瑠璃は近松の世話物ね。「そうそと」は江戸時代からで平成・令和に廃れたという訳ね。 私:その通り。結論だが・・The old soldiers do not die. They just fade away. The old onomatopoeiae do not die. They just fade away. 君:「そうそと」はそうそと消えていくのね。チョッピリ(AっBり)寂しいわ。 私:「そうそと」をうっかり忘れるところだった。思い出せてにっこりの僕。 君:・・AっBり忘れ・・AっBりの貴方。 |
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