飛騨牛と松阪牛と言えばお国自慢のお話しになりましょう。飛騨人は皆が飛騨牛を自慢するでしょう。がしかし美濃の人が岐阜県には飛騨牛があると自慢するでしょうか。多分しないでしょうね。有名になった飛騨牛ですが、歴史は浅い。飛騨牛が若し世界的に有名になってしまうと美濃の人もはじめて、岐阜県には飛騨牛がある、と自慢したい気持ちになるのでしょう。
かたや、松阪牛は三重県民全員がご自慢なさるかも知れませんね。やはり、松阪牛のほうが歴史があるし、名前が通っているのです。また国民の皆様のイメージは松阪牛は超高級、飛騨牛は高級、という所でしょうね。お料理の値段が若し同じなら、迷わず松阪牛を選ぶ、という人が多いのかも知れませんね。
ただし、お国自慢の肉ですから、三重県の方を接待する場合には必ず松阪牛の料理にしましょう。三重県の方だからいつも松阪牛はお食べのはず、たまには味比べをしていただくのも良いかも、と考えてしまって飛騨牛の料理を用意した、というのでは全く接待になりません。松阪牛をご用意しましたが、苦労しました、思いっきり奮発してしまいました、という言葉で飾れば接待も百点満点です。
例えば私が接待を受けるとしても同じ事、大西様は飛騨のご出身と聞いております。本日は是非とも飛騨牛でのおもてなしという事でお願いします。実ははなはだ失礼かとも考えましたが、既に店も探し、予約も入れてしまっているのでございます。あなた様さえ承知したとおっしゃってくだされば、店には到着の時刻を告げるだけでございます。 なんて、よいしょをされちゃうと、佐七もそりゃあ嬉しいですわ。飛騨牛をわざわざ、いゃあそりゃあどうも。すみませんね。いゃあ高級肉ですからねえ、飛騨の人間の口にもめったに入らないんですよ。いゃあ、私も久しぶりです。自慢じゃないけど、飛騨牛は美味しいですよ。いゃ、自慢になっちゃってるな、ははは。 私は実は雑食動物でお腹がすくと何でもおいしい、という極めて経済的な人間なので実は飛騨牛でも輸入肉でもなんでもよかったのでした。お国自慢ぶりっこを演じてしまった佐七でした。 |