大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 心理学 |
オレオレ詐欺、方言の抑止効果 |
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私:先ほど知ったネット情報だが、オレオレ詐欺に対して方言が抑止効果があるという幾つもの記事がある。いずれリンク切れ、もうこの際はリンクは張らないでおこう。人口で修正した都道府県別の発生状況だが、ダントツ一位はどこかわかるよね。 君:東京でしょ。 私:ああ、そうだ。ブッチギリ一位。理由はわかるよね。 君:何言っているの、あなた。表題が答えそのものじゃないの。掛け子用のマニュアルなんて共通語で作成されているに決まっているわよ。だからトレーニングが浅くても短期間で一人前になれるのよ。 私:その通り。では逆に犯罪が極端に少ない県がある。どこだと思う。 君:さあ。 私:鹿児島県だ。共通語の掛け子用マニュアルを用いてコテコテの鹿児島方言でお話しなさる老人と電話での会話が成立するのは不可能に近い。 君:なるほどね。気になるのは岐阜県ね。何位なの。 私:いやあ、嬉しい質問だ。堂々9位。つまりは美濃方言・飛騨方言の区別はこの際は目をつぶって平均的な岐阜県老人がお話しになる方言は東京語に近似し、電話の会話が成立しやすい事を示している。 君:貴方も私も飛騨、だから岐阜県と言っても飛騨限定のお話でいきましょうね。アクセントの要因が大きいわね。完全に東京式だから。飛騨方言の文法が畿内文法だからと言っても戦前辺りまでの事。今ではどんな飛騨の老人も普通に共通語をお話しになるわ。だから大阪・京都あたりは犯罪率が少ないのでしょ。 私:うん、とてもいい感をしているね。大阪は43位、京都は36位。愛知は28位。都会だから犯罪率が高いとは言えない。それにしても嬉しいね。飛騨方言が東京語に近い資料を見せつけられて。何時の歳になっても生まれ育ちを卑下してしまう。飛騨方言丸出しで飛騨以外のお方とお話しする事なんて出来ないね。全国各地の方言がどの程度、東京語に似た雰囲気なのか、僕はこれを「方言の東京度指数」と名付けたい。飛騨方言って結構、指数が高いな。 君:でもオレオレ詐欺対策としては如何にディープな飛騨方言の電話会話に持ち込めるか、高齢者の人々向けに講習があったほうがいいんじゃないのかしら。 私:そうだね。老人層でも方言は忘れかけていらっしゃるかも、という事で、方言教育による抑止効果か。なるほど。 君:「おれだけど」と電話が掛かってきたら、どう受け答えなさいと教育すれはいいのかしら。 私:例えば「おれだけどやって?なんじゃ?わりゃ(=お前は)急にいさってまって(=いばってしまって)、そんな東京の衆みたいな言い方して。田舎の親をたあけにするもんでねえぞ。」なんてのはどうかな。 君:確かに。これでは掛け子さんは次の会話に繋ぐ事が難しくなるわね。他にもバージョンないかしら。 私:ああ、あるとも。「なんじゃわりゃ?オレオレ詐欺のつもりか知らんが、いつもは飛騨方言丸出しでそっとる(=言っている)くせに。「おりぃやけど」でないとおかしいろ!ほりゃ、いつもの電話みたいに「おりぃやけど」ってそってみよ。」なんてのはどうかな。 君:それでひるむ掛け子さんじゃないかもしれないわよ。「つい東京の言い方になっちゃって。おりぃやけど。」と逆襲されたらどうするの。 私:「なんじゃ、まんだオレオレやるつもりが。そんなら、おらんどごの坊(=我が家の息子)ならわりぃのババ様(=あなたの母親)の名前、そってみよ。」と合言葉作戦に出る事だね。 君:逆恨みされないように、会話は程々で切り上げたほうがよさそうね。 私:江戸時代には方言は生きた手形と言われていたくらいで全国の方言の多様性は底が無い。方言が廃れつつある現在、アマチュア方言家としては飛騨方言の勉強だけではいけない。令和の時代における方言学は今や全国区の時代だ。一応は日本各地の言葉を知らないと、旅先で「僕の趣味は方言です」と言ったが為に恥をかきそうになる事があるが、先だって島根県に旅行した時は、思わず株を上げてしまった。 君:へえ、どういう事。 私:旅先で知り合ったご夫婦だったが、たまたま食事が同席、そして偶然にも彼は同業ですぐに仲良しに。会話ははずみ話が趣味に及んで、飛騨出身で方言の勉強をしているとお伝えしたところ、彼が「実は私も田舎の出身です。今から地元の言葉でスピーチをしますから僕の出身が当てられますか。」とお聞きになるので、受けて立つ事にした。 君:ほほほ、それで。 私:アクセントは、やや関西系とはいえ東京式にも近かった。順接の文末詞に「けん」を用いた。そこで僕は彼に「有難うの意味で「だんだん」と言いますか?」と逆に質問したら「はい」とのお答え。そこですかさず「愛媛県・八幡浜のご出身ですね。」とお伝えしたら彼はびっくりしていた。 君:なるほどね。各種の方言要素の地図を数枚重ねるとあっというまに地域が絞られてしまうという事なのよね。 私:人畜無害のお遊びだ。 君:逆に、ディープな方言の言い回しで、その土地の人をすっかり信じ込ませる事にもならないかしら。 私:松本清張の小説「砂の器」が有名だね。出雲方言が主人公と言ってもいいだろう。他には、その昔に吉展ちゃん誘拐事件というのがあった。犯人からのホンの数行の電話会話だけを手掛かりに、犯人特定、事件を解決に導いたのは金田一春彦先生と東北大学の鬼春人先生、お二人の方言学の大家だった。「吉展ちゃん事件の犯人―その科学的推理 (1965年) (フロンティア・ブックス)」。江戸時代に戻るが、江戸幕府が全国に隠密を送って情報収集をしていたが、何年たっても戻って来ない奴もいる。江戸城内では「あいつって方言でドジ踏んで隠密がばれて殺されちゃったんだろうね。僕達の方言教育が足りなかったんじゃね?惜しい人材だったよね。あいつ、ホントいい奴だった。反省材料だよ。ハッキシ言って、泣ける。それにしても薩摩の方言は難しいんだよね。それに比べて天領飛騨は楽勝だよ。歴代の飛州郡代様の時代から情報は筒抜けだもんね。直轄領ってホント助かるわあ。だからさあ、次の薩摩への隠密、誰を送るわけ?はっきり言ってもう人材いないんだよ。俺、この職から逃げたい。」と会話されていたのだろう。 君:ほほほ。八幡浜ご出身のお方とは同業のよしみだったのは少し残念ね。職業を明かさず、方言を研究しています、と、まずは趣味のお話から初めていたら、続いては件の出身地当てクイズが始まって、締めに「大学で国語学をやっています。日本の方言、特に飛騨方言を中心とした中部の方言がテーマです。」とでも言えば、信じ込んでいただけたわよ。多分。 私:オレオレ職業詐称、旅の恥はかき捨て、ってのだよね。 君:現実における職業・医師は仮の姿なのよ。あなたの真の姿、方言萌え大西先生というアバターが世に解き放される瞬間よ。ほほほ まとめ 最強の暗号が俚言(りげん、全国広しと言えども、その地域でしか話されていない言葉)です。全国のオレオレ詐欺の皆様へ、飛騨方言を甘く見るな。あなた方にここで飛騨方言の俚言のリストを明かす訳にはいきません。私は善良な市民で体制側の人間ですから。飛騨の俚言のリストについては公安上の問題が絡みますので非公開とさせていただきます。 |
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