大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 

瑞祥名

戻る

私:瑞祥名とは簡単に言うと、縁起の良いおめでたい名前。
君:具体的には地名ね。
私:その通り。広義では固有名詞。従って人名も瑞祥名そのもの。
君:瑞祥名を用いた地名や名前の語源の類推はとても簡単ね。
私:簡単どころか、ある時にポンとつけられた名前だから記録が残っている事が多い。岐阜県地名辞典などで調べると丸わかりという訳だ。
君:飛騨での具体例は?
私:正直申し上げるとはっきりとしない地名も多い。いつの時代から(飛騨)高山と言うようになったのか、諸説がある。旧吉城郡は元々は荒城郷だったが、荒、の字を嫌い、吉城に改められた。確か明治。神岡鉱山・スーパーカミオカンデの神岡町だが、これも明治に突然に出来た地名。古くは船津。上宝(かみたから)も、高原川の上流という事で、カミタカハラ改めカミタカラ。これも明治だったかな。
君:高山市一宮町だけど、全国に一宮があるわね。
私:その通り。瑞祥名の欠点はそこにある。没個性というか、キラキラ地名と揶揄する人もいらっしゃる。
君:他にも欠点が指摘されていないかしら。
私:要は当て字であり、漢籍に由来する名前など無いと思ったほうがいいだろう。元号の制定とは大違いだ。つまりは安易。住民投票でなんとなく決まったという地名が多いと聞いている。
君:両親が一生懸命に考えて生まれた子供に名前を与える事と同じよ。当然の事。良い事だと思うわ。上から押し付けられる名前じゃたまったものじゃないわよ。
私:まあね。締めくくりは僕の故郷、高山市久々野町。
君:久々野も確かに瑞祥名ね。明治にポンと出来たのかしら。
私:ははは、とんでもない。日本でも最古の名前だぜい。
君:最古とは、また大げさな。まさか、日本書紀。
私:いや流石にそこまでは。慶長18年(1613)飛騨国郷帳に久々野の記載があるから、中世以前の名前である事は間違いない。
君:それがどうして日本最古なのかしら。
私:実は町には久々能智神をまつる社があり、これから来ているそうなんだ。但し記録は無い。古代地名ロマンスです。
君:久々能智神とは。
私:ククノチ(クグノチとも)は『古事記』では久久能智神、『日本書紀』では句句廼馳と表記する。イザナギ・イザナミの間に産まれた神様で、木の神様です。左七は神社にお参りしたり、宣命・祝詞を聞いたりするのも好きだが、これらの文化は古典文学の理解に必須と言えなくも無いね。何れにせよ、開合の区別とか、古代の音韻を現代に残す、大変に貴重な無形文化財が宣命・祝詞なんだよ。日本語の勉強にはなる。
君:ほほほ、あなた、よからぬ事を考えているでしょ。
私:おっ、わかったかい。ククノチの名義は、ククを、茎の意と取る説と、「木木」の古形と取る説とがあるが、そりゃあ木々で決まりでしょ。だって久々野町の産業と言えば林業しかないぜ。有道(うと)の国有林が有名だ。尤も飛騨と言えば乗鞍・御岳・白山、二つの国立公園域が最大の国有林です。いかにも小振りの久々野町は一応、地元代表という事でお願い。
君:久の漢字は縁起がいいし、古事記にもある地名となると、左七君としてはいう事なしね。ほほほ

ページ先頭に戻る