大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 

異次元の語源探し

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私:昨日は東京帝国大学教授・金田一京助先生がバリカンの語源を突き止めるのに三年かかった話をした。語源はなんと当時フランスに有った会社、バリカン商会 Bariquand et Marre。ネット情報はここ
君:操業1834で廃業1968、幻の会社ね。
私:そう。でもネットの普及で幾らでも情報を得る事ができる。有難い事だ。先ほどネット検索したら、このフランス語での日本の理容室の多い事。ちょっとしたファッションという事だね。
君:異次元の語源探しとは、フランス語と心得たり。
私:飛騨方言と呼ぶべきか、戦前の人は帽子の事をシャッポといった。これもフランス語。
君:語源は外来語の事もあるから、多国語に精通していないと語源探しのゲームに参加しないほうがよい、という戒めね。
私:それを言われると辛いな。僕の知っている外国語は英語、ドイツ語、ラテン語、ギリシャ語の一部。たったこれだけ。蛇足ながらスロベニアを旅行した事がある。表札に Som。民泊施設である事は瞬殺技でわかった。眠る、の意味だ。不眠症を insomnia と言う。さて金田一先生には申し訳ないが、先ほどはネット検索し、僕の得た情報は彼のそれを凌駕する。Bariquand はフランスによくある姓だ。驚くなかれ、世界中の Bariquand family を検索する事ができる。何故だと思う?
君:さあ。
私:西洋人は教会で洗礼を受ける。この時に記録が残る。このような情報が今、ほとんどデジタル化されたから、と言うのが答え。脱線した。元に戻そう。物類称呼(1775)を知ってるかい。
君:江戸時代の方言辞典ね。
私:国研さんの力の入れよう、ネット公開は言うに及ばず、全文検索システムまで構築しておられる。
君:超一級資料という事ね。
私:いや違う。大衆向けで、好事家的な書。間違いも多い。
君:聞き捨てならないわね。
私:飛騨方言に平板名詞マチョーがある。形動語幹になり、まちょうな、は形動ナリ。意味は真面目・几帳面。つまりはいい意味。音韻が愛嬌あるので僕は昔からこの飛騨方言の語源が気になって仕方なかったんだよ。当サイトを設立したころは手元資料が少なかったが、物類称呼は岩波書店に復刻版があったのですぐ購入した。通読して、飛騨方言まちょうな・真手也、との注釈があり、なるほどと思った。
君:ほほほ、その後は?
私:実は真手也は間違いだ。というのも、その後にも毎月のように数冊以上の古書を買い求め、書斎一杯になり、それをコツコツ読んで気づいた事がある。飛騨方言まちょうな、の語源は、まじやう真情・形動ナリとの僕なりの結論に達した。意味は飛騨方言と全く同じ。各種の資料に真情の記載がある。文例は永代節用無尽蔵(1849)、世間母親容気(1752)詞葉新雅(江戸後期)。何の事は無い、近世語として、まじめな人、という意味で、まじやうな奴、とか言っていた。近世語が飛騨に残っていただけの話。僕が言いたい事はたった一言、要するに語源検索は情報量が物を言う世界。
君:なるほどね。俳諧師の越谷吾山おひとりの情報収集力には限界があった。つまりは、物類称呼にはかなり間違いが含まれている、と言う意味ね。
私:資料は多いに越した事はない。国文系の大学に在籍すればいう事無し。但し各大学がデジタル化に力を入れ、ネット公開しておられる事は有難い。
君:ますます語源探しが楽しくなっちゃうじゃない。
私:現代のインターネットの時代、情報爆発と言われる時代に語源学は新たなステージに入ったと思う。
君:それが異次元という意味ね。
私:プリーズリメンバー、和語について語源を考えるのはやめましょう。何故、ネコというのか。多分、寝ている子のような存在だからかな。ぶっ
君:それって語源学の教科書に戒めとして出てくる例でしょ。
私:その通り。ところで蝸牛考を通読した時、飛騨方言にマメクジラというのが出て来た。これは瞬殺技で語源がひらめいたよ。
君:カタツムリの事を飛騨ではマメクジラ?・・若しかして豆鯨。まさか
私:カタツムリが鯨の訳ないでしょ。ナメクジが訛ってマメクジラになったに決まっているじゃないか。
君:なるほど。蝸牛の方言量が250近くという事で極端に多い最大の理由は、子供がかってに名付けるから、という事で、子供のような純粋な心を持てばパッと語源は閃くという事かしら。それも或る意味で異次元ね。ほほほ

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