大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
類音牽引に関する一考察 |
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私:語源学の中でも民間語源の形成の理屈を知るためには類音牽引の概念の理解が必要。類音牽引って何? 君:ほほほ、国語学の命題というか、音韻学の命題でもあるし、心理学の命題でもあるし、要は類音語とは同音語あるいはほぼ同音語の意味であるし。そして他方では、つまり牽引とは、つまりは引っ張る事、つまりは影響を受ける事、という意味ね。以上から演繹される事と言えば、民間語源において類音牽引とは、音韻の似通った言葉を語源と勘違いしてしまう事。 私:その通り。大正解。そして民間語源の大半は類音牽引の現象だ。どこにでも書かれている例だが、何故チョッキというのか、若しかして語源はちょっきり着るからかな、とかね。つまりは無邪気な発想。 君:英語から来ているのかしら。若しかして英語語源学 English etymology。 私:とてもいい質問だ。synonymous traction などと言う言葉がヒットするね。でも違うかもしれない。僕の書斎だが、英語の成書が実は少なくて、こちらも勉強中なので、若し間違っていたらゴメンナサイ、のレベルだ。僕の英語感覚では、ちょっと違うな、という事。要は synonym traction でいいと思う。つまりは traction of synonym。synonymous traction と言えば synonym-like traction になっちゃうんじゃないかな。他に英語では assonance という重要単語がある。本題に戻そう。つまりは今日の考察は日本語だけで行こう。 君:類音牽引という日本語についての議論という事ね。 私:その通り。先ほどはネットを調べまくったが、意外な事に論文は少ないのが残念。例えば「国語史」における、「病理」と「治療」 君:「病理」と「治療」とは物騒ね。 私:いやあ、インパクトがある。ユーモアすら感ずる。高橋顕志先生は広島大学の言語学の教授。 君:一考察とは、つまりは深堀り。質問状のようなものかしら。 私:はい、左様でございます。 君:いやだ。変な事を書かないでよ。 私:同音牽引と類音牽引、そりゃその通りでしょ、と言う事で問題が無いと思うかい。 君:ええ。 私:僕はそうは考えない。牽引にはいろんなパターンがある。つまりは同音の事も類音の事も。となれば異音が牽引したったいいじゃないか。世の中には異音牽引という民間語源はないのだろうか。 君:うーん、そこまでは考えていなかったわ。 私:華御殿という名称があったとする。花御殿、鼻御殿、と勘違いするのが同音牽引。お花御殿と勘違いするのが類音牽引でしょう。華御殿を棚御殿と勘違いする事があれば、これって異音牽引だぜ。ほんの一例。 君:馬鹿々々しいわ。想像の言葉ではなくて、実際の民間語源でなくちゃ話にならないわよ。 私:ふふふ、ひっかかった。 君:えっ?・・・しまった、飛騨方言の実例を出そうというわけね。 私:その通り。飛騨方言の動詞にゲバスがある。五段活用だ。意味は失敗する。これの民間語源がゲバスル下馬する。 君:げばす・げばする、つまりは類音牽引だわね。 私:うん、それは全く問題ない。但し意味論で大変な問題が起きる。下馬する、という動詞は馬からササッとかっこよく降りる事。つまりは乗馬の反対語が下馬。ところが飛騨方言ゲバスは、落馬するという意味に引きずられて生まれた民間語源「下馬する」なんだ。 君:乗馬と下馬は同類語だけれど反対語。乗馬と落馬も反対語。下馬と落馬も反対語なのよね。 私:その通り。二つの名詞がある場合、二者の関係は・・★同音、同類音、異音の何れかの関係、★同意語、同義語、反対語、無関係な関係、このような二つのパラメータで考えるべきでしょう。つまりは民間語源「下馬する」は類音反対語牽引なんだ。決して類音同意語牽引じゃない。 君:ほほほ、なるほどね。同類牽引だから必ずしも同意語の牽引とは限らない、反対語の牽引などというとんでもないケースもある。好例が飛騨方言動詞ゲバスという事ね。 私:花と華が牽引する、これはなぜかわかるよね。 君:同意語だからよ。小学生でもわかる理屈だわ。 私:ふふふ。 君:なによ、その言い方。 私:花と鼻すら牽引する事があるかも知らない。これはどう思う? 君:なるほど。意味的には無関係という事とももうひとつ大切な点、アクセントの違いね。 私:その通り。牽引の現象がある場合、★音韻はどうか(同音、類音、異音)、★意味はどうか(同意語、同義語、無関係な語)、★アクセントはどうか(同じか、異なるか)、つまりは牽引といっても3x3x2=18通りあるのでは、というのが僕の主張。本邦初公開。 君:素人が言いたい放題ね。ゲバスで総括してちょうだい。 私:ほいきた。飛騨方言動詞ゲバスの民間語源ゲバスルは類音反対語異アクセント牽引だ。 君:下馬する、はゲバスの正反対の意味でアクセントも異なるんじゃ、それこそ民間語源の横綱ね。 私:その通り。僕はゲバスの語源はカケハズスだと確信しているが、カケハズスは類音で同じ意味で同じアクセント、つまりは語源そのもの。 君:やっと納得、左七君はそれを広島大学の言語学の教授に聞いてみたかったという事なのよね。ほほほ |
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