大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

存在動詞「ゐる・をる」-2

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私:日暮れて途遠し。
君:どうしたの、急に。
私:落ち込んでいる。
君:嘘。
私:ははは、ばれたか。だからこうやって記事を書いている。昨日は家内と長野県をドライブしたよ。
君:存在動詞「ゐる・をる」の東西対立と言えば、坂東が「ゐる」で畿内が「をる」、ははあ、方言の東西境界をドライブなさったのね。
私:お察しがいいね。姥捨て山SAで休憩、お店で見つけた方言キャッチコピー、「知っとる?飯田市は人口一万人あたりの焼肉店舗数が日本一、焼肉の町(南信州)飯田の辛みそ」。
君:なるほど。南信州は畿内「をる」に違和感を覚えて、長野県全域が坂東「ゐる」の地域じゃないか、と疑問に思ったのね。
私:なにせ旅行中だから、蔵書は手元にない。あわてて携帯でネット検索を始めた。こうなると信州ドライブどころではない。
君:でも、奥様とご一緒だったのでしょ?
私:勿論だ。ただし、僕が携帯で何の検索をしても家内にはわからない。地図アプリを開く振りをしただけの事。国研サイトにもアクセスしたし、文献も渉猟できた。すぐに判明した事は、南濃、つまりは伊那谷は畿内「をる」の地方なんだ。つまりは飛騨は畿内「をる」の地方だが、岐阜県の南部、つまりは平野部の美濃地方のみならず、尾張もすべて「をる」の地方、という事。認識を新たにした。長野県全域が「ゐる」の地域じゃないんだね。本当に驚いた。
君:でも、何故だろうと考えながらドライブしてしまったのね。
私:えっ、わかるかい。
君:そりゃもう。でも休日に奥様とドライブする時くらいは方言の事は忘れなきゃ駄目よ。第一に、考え事をしながらハンドルを握るという事は交通安全上、問題のある行動だから、やめてね。後生のお願いだから。
私:ありがとう。優しいね。貴方の仰る通りです。今後は気を付けるよ。それにしても、存在動詞「ゐる・をる」は共に万葉集にあるからなあ。つまりは日本全体がパッチワーク的に「ゐる」の地方と「をる」に分かれているのならまだしも、畿内「をる」の勢力範囲が広く、つまりは方言境界線を東に追いやっている。何故だろう?言語の恣意性 arbitrariness. と言う学術語がある。たまたまそうなっただけ・それ以上の意味は無い、という事かな。それにしても不思議だ。
君:物事を不思議だと感ずるのは、誰にでもできる事ではないわね。感性が要るけれど、利口な人は意味の無い事は深く考えないし、悩まないものなのよ。
私:自分が利口でない事がよくわかった。方言境界を形成するものは、地理・地勢、文化圏、婚姻圏、幕藩体制での国境、等々があろうが、今のところは僕の大腸菌レベルの頭では伊那谷が「をる」の地方である事が意味不明。
君:大腸菌さんに失礼だわ。それに飛騨が「をる」の地方である事はどう説明するのかしら。飛騨工?
私:うーん、それ以外、考えられないな。
君:ステレオタイプというのよ。左七君がおバカさんな証拠よ。ほほほ

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