大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

飛騨の民話・味噌買い橋

柳田國男全集・日本昔話集で紹介されておよそ全国百傑に入る飛騨の 民話・味噌買い橋、ですが
"岐阜県高山市の小学校教員であった小林幹が『世界童話大系』第七巻に収められた松村武雄訳の「スウォファムの行商人」を参考にして、児童たちに話すため、地元の橋をめぐる話に書き換えたことが明らかになりました。あまりにも上手な翻案作品だったので、あの柳田國男でさえまんまと騙された・・"
奈良教育大学竹原威滋氏寄稿
http://mail2.nara-edu.ac.jp/~takehat/kobore3.htm
ですが、ふーむ、つまりはこの飛騨民話の発祥は昭和初期なので しょうか。 ちなみに筆者は筆者の明治生まれの祖父母からこの民話を 聞いた覚えがありませんので、近年の作という事は ある程度、筆者なりに合点がいきます。でもつまらぬ詮索はよしましょう、 今日は佐七が柳田國男全集(筑摩書房)の完全飛騨方言訳を全国の皆様にお届けします。
佐七訳・味噌買い橋

乗鞍岳の西の麓の沢上(そうれ)っていう村になあ、 むかし、長吉っていう正直な信心ぶかい炭焼きがすんどったんやとよ。 ある晩なあ、こんな夢をみたんやとよ。 白髪の老人が長吉のなあ枕もとに現れてよう
高山の味噌買い橋にいきゃあええごとぁあるぞ。
って言わはったんやさ。 長吉ゃあ、さあっそく炭をせおって商売しながらなあ高山 の町にやってきたんやさ。 そんで、いちんちじゅーう味噌買い橋のたもとに立っとったんやけどなあ、 なーんにもええごとぁながったんやとよ。 そんでもなあ、なんかあええごとぁあるか知らんって 思ってなあ、二日、三日と立っとってよう、五日めに なってまったんやさ。 橋のそばにゃ一軒のとっぺ屋(=豆腐屋)がぁあったんやが、 そこの主人がやってきてよう、
"なんでわりゃ(=あなたは)毎日々々ここに立っとるんじゃい。"
ってなあ、不思議そうに聞いだんやとよ。 長吉ゃあ夢の話をせると、豆腐屋の主人ゃあ笑いだいだんやとよ。
"そんなだばえたいな(=くだらない)夢なんかあてにして、 何日も何日もこんなどこに立っとるなんてなあ、 わりゃあ(=あなたは)たあけやなあ。

おりぃもなあ(=私もね)この間そんなやな(=ような)夢をみたんやさ。 なんでもなあ乗鞍岳の麓のソウレっていう村に長吉っていう 男がおるんやが、そいつんどご(=そいつの所)のそばの杉の木の根に 宝物ぁ埋っとる、っていう夢なんやさあ。

おりゃソウレなんていう村ぁ知らんし、 知っとっても夢なんか信じんわい。 わりぃもなあ、はよ帰って炭焼きでもやっとったほうが えんやぞ。"
ってなあ言わさったんやさあ。 長吉ゃあそれを聞いでなあ、
( ・・・なーんじゃよう(=何だ、そうだったっのかい)。 こいつぁあの夢のええ話に違いないって ・・・)
って驚いだり喜んだりしたけどなあ、 とっぺ屋の主人にゃあそれとのう(=それとなく)お礼を言って 大急ぎで村へ帰ったんやとよ。

帰ったらなあ、すんと(=すぐさま) 家のそばの杉の木の根本を掘ってみるとよう、 金や銀のお金やぎょうさんの宝物がざくざく出てきて 、たちまちに長者になったんやとよ。

村の人ぁこの長吉のことを福徳長者って呼んだんやとよ。 しゃみしゃっきり。
確か聖書に Ask. Then it shall be given. って 書いてありませんでしたっけ。要は同じ意味。 佐七は言いたい!!夢を信じない人は恋は実りません、まずは長吉の ように信じて実行あるのみですね。恋の相手は異性とは 限りません、学問・芸術に恋する事も、事業に恋する事も。