大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

末語二語が、たい、である形容詞の語源に関する一考察

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私は語源に特に興味があるのですが、「おぞい」の語源は古語「おぞし」に由来するのはよしとして、「おぞくたい」という言葉は、ひょっとして「おぞきことたり」つまり形動タリなのでしょうか。「はんちくたい」の語源が「なまはんじゃく(形動口)・なからはんぢやくなり」ではないかと思いつきました。学問的根拠はありません。ここで、飛騨方言で思い浮かぶ形容詞が「ぬくたい」ですが、辞書を見ますと、旺文社古語辞典には近世語「ぬくとい」、広辞苑には「ぬくし」が記載されています。「ぬくたい」の語源は「ぬくきことたり」でしょう。でないと、単に「ぬくい」と言えばよいの、にわざわざ「ぬくたい・ぬくとい」と言う事の説明が困難です。つまりは「ぬくたい」が古い言葉で、これが後に「ぬくとい」になったのでしょう。

さて、不肖佐七辞書には「けぶたい」「ねぶたい」も記載しています。両語は共通語では「けむたい」「ねむたい」です。旺文社古語辞典には「けぶたし」「ねぶたし」の記載がありますが、更には両語に共通する語源の注、「けぶりいたし」「ねぶりいたし」の記載がありました。また不肖佐七辞書の通りですが、飛騨方言「つべたい(=つめたい)」の語源ですが、「爪+痛し」でしょう。飛騨方言に特徴的な清音マ行と濁音バ行の子音交替によるものです。「つべたまし」は語源ではないようです。

以上を踏まえて表にしてみましょう。

飛騨方言   共通語  語源     根拠
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おぞい    わるい  おぞし    古語辞典
おぞくたい  わるい  おぞき事たり 私の考え
はんちくたい くやしい 生半尺なり  私の考え
ぬくたい   ぬるい  ぬくし    古語辞典
ぬくたい   ぬるい  ぬくき事たり 私の考え
けぶたい   けむたい けぶりいたし 古語辞典
ねぶたい   ねむたい ねぶりいたし 古語辞典
つべたい   つめたい 爪痛し    語源辞典
おもたい   重たい  おもたし   広辞苑
いたい    いたい  いたし    古語辞典
かたい    かたい  かたし    古語辞典
うざったい  鬱陶しい うざい、の転 私の娘
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この二日ばかりは飛騨方言の形容詞おぞい・おぞくたい、についてあれこれ考えてばかりいました。ひとつの事を考え始めると、とまりません。語源探しゲームです。記載が間違っている可能性もあり、その折はご容赦願います。

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