AはBだ、AがBだ、のふたつの文は意味がどう違うでしょうか。
例文が判りやすいでしょう。佐七は美男子だ、佐七が美男子だ、の違いは何でしょう。
佐七は美男子だ、とは、世の中にイケメンは多いが佐七もそのひとりである、
という意味です。
佐七が美男子だ、とは、世の中の男の中で一番のイケメンは誰ですか、
という問題に対する答えです。
続いて質問、美男子は佐七だ、美男子が佐七だ、の違いは何でしょう。
最初の文章は、世の中にイケメンは多いが真っ先に思い浮かぶイケメンは誰ですか、に
対する答えです。美男子が佐七だ、とは、佐七にはいろんな面がありそうだが
佐七の特徴を一言でいうと何ですか、に対する答えです。
上記の言葉のお遊びから、AはBだ、と、BがAだ、とは同じ意味である事が
判るでしょう。
AはBだ、とは、BがAですか、という質問の答えであり、Aの集合がBの部分集合である事を意味する事をさし、
AがBだ、とは、BはAですか、という質問の答えであり、Bの集合がAの部分集合である事を意味する事をさす。
当たり前の事ですね。全ては記号論理学。
やっと飛騨方言の話です。
このように便利な、は、と、が、の使い分けですが、
いま古語辞典を調べたら、ふーむ、おおざっぱにいって中世あたりから
出てきた日本語の言い回しそのもの、と言う事なのですが、
飛騨方言では、は、と、が、はお構いなしです。
なにせ発音しないのですから。
例文と参りましょう。
共通語 飛騨方言
春は桜が咲く季節だ。 はらぁさくらぁ咲く季節やさ。
桜は春が咲く季節だ。 さくらぁはるぁ咲く季節やさ。
春が桜の咲く季節だ。 はらぁさくらぁ咲く季節やさ。
桜が咲く季節は春だ。 さくらぁ咲く季節ぁ春や。
春が桜の咲く季節ですか。 はらぁさくらぁ咲く季節かな。
春は桜の咲く季節ですか。 はらぁさくらぁ咲く季節かな。
桜が咲く季節は春ですか。 さくらぁ咲く季節ぁ春かな。
桜は春が咲く季節ですか。 さくらぁはるぁ咲く季節かな。
桜ですが、 さくらやけどいな、
春は咲く季節ですか。 はるぁ咲く季節かな。
桜ですが、 さくらやけどいな、
春が咲く季節ですか。 はるぁ咲く季節かな。
春ですが、 はるやけどいな、
桜は咲く季節ですか。 さくらぁ咲く季節かな。
春ですが、 はるやけどいな、
桜が咲く季節ですか。 さくらぁ咲く季節かな。
内省実験しますと、佐七って飛騨人だなって、ほんと
つくづく感じてしまいます。
これらの飛騨方言文章がビシバシ生きた言葉として
受け止められるのですから。
つまりは飛騨方言に於いては、助詞は発音していないに等しいし、
更には意識もしていないに等しいって事は、
飛騨方言は若しかして膠着語ではないって事でしょうか。
( 突然、飛騨方言で )
以上、しょーもねえごと書いたけどぜーんぶ、前置きなんやさ。
忘れてくりょよ。
やっと本文やけどいな、
世界にゃあ数え切れんほど言語があるんやけどなあ、
中ににゃあ数万人しか話さん言語やたってあるさ、なあ。
そやげと、高山市で十万人、飛騨市と下呂市で2x3=六万人、
合計十六万人も飛騨方言はなしとるろ。
飛騨方言やたって、世界的にみりゃ結構ぎょうさんのひとだちゃあ
話してござる言語なんやぜな。