方言全般に言えることかと思いますが、助動詞の活用が最も(飛騨)方言らしい部分といえますので
その活用を論ぜずして(飛騨)方言は語れないという事になりましょう。
指定の種類の助動詞・だ、の活用に続き、比況の種類の助動詞・ようだ、の活用をお示しします。
尚、比況の種類の助動詞・ようだ、の接続は体言+"の"、ないし連体詞です。
蛇足ながら、接続とは助動詞に先行する動詞の意味の部分です。
共通語 飛騨方言 文例
未然 ようだろ ようやろ 飛騨を好くようやろ
連用 ようだっ ようやっ 飛騨を好くようやった
ようで ようで 飛騨を好くようでなあ、
ように ように 飛騨を好くように
終止 ようだ ようや 飛騨を好くようや
連体 ような ような 飛騨方言好きのような佐七
仮定 ようなら ようなら 飛騨を好くようなら
命令 (−) (−)
簡単に考えますと、助動詞・ようだ、の活用は指定の種類の助動詞・だ、の活用と同じです。
共通語はダ行、飛騨方言はヤ行という事になります。
ただし連用形の活用はヤ行イ列とヤ行エ列が日本語の音として存在しないため、
飛騨方言の連用形・で、に、は共通語のそれと同じです。
ただし、比況の種類の助動詞・ようだ、と、指定の種類の助動詞・だ、では接続が違います。
助動詞・ようだ、では、接続に"の"、が不要で、従って、共通語も飛騨方言も撥音便はありません。
一方、助動詞・だ、は、接続に"の"、が必要で、飛騨方言ではこの部分が共通語と異なり、撥音便化するのが普通です。
更には古語文法における比況の種類の助動詞・ごとし、ですが、飛騨方言では遣われなくも無い、と言うことです。
例えば連用形ですが、
"飛騨高山に行くごとく、乗鞍国立公園に行く事は簡単やさ。観光バスで行けるんやでな。
そやけど立山連峰に行く事ぁ難しいぞ。道のないとこを歩いていくしかないでな。"
のような言い回しがあります。
共通語でもこの程度に、古語助動詞・ごとし、が使われなくも無いでしょう。