大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

否定の副詞を用いた不可能表現

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不可能を示す副詞句には例えば、 いくらなんでも、 とてもじゃないが、 さすがに、 はなから(無理)、 などの表現がありますが 動詞連用形+否定の助動詞・ぬ、をこれらに接続しますと飛騨方言のセンスにあいます。 以下に例文を。 共通語では、差し詰め、いくらなんでも〜できない、と言うべきでしょう。
実現可能
 (スケートで)ほりゃきょうぁ調子がわるいで
 こんね(=こんなに)いくらなんでもすーすーすべらんぞ。
 きんのう休みがとれんなんだもんで、いくらなんでもそこへいかなんだんやさ。
 途中までゃあはしったげど、最後までゃいくらなんでもはしらなんだ。
 わりゃスワヒリ語ぁいくらなんでもはなさんろ。
 うーん、なんべん押してもこの窓ぁいくらなんでもあからん。

潜在可能
 きょうぁあ気分が悪いで、いくらなんでも泳がんぞ。
 いくらなんでも正月に大学いくがよ(男)?いくらなんでもいかんぞ(男)?
 いくらなんでも正月に大学いくがな(女)?いくらなんでもいかんさ(女)?
 そんどきゃ、いくらなんでもとおもったもんで、いかなんだ。
 太郎ぁ実ぁ米国人やもんで、日本語をいくらなんでも話さんのやさ。
 その窓ぁさびとるもんでいくらなんでもあかん。

心情可能
 愛しとるなんてはずかしょうていくらなんでも言わん。
 あの崖の上なんかこおうて(=恐くて)いくらなんでもあるかん。

能力可能 
 おりゃまんだ百メール十秒でゃいくらなんでもはしらん。
 まんだ勉強しとらんもんで、中国語はいくらなんでも話さん。
 おりゃおさけぁいくらなんでものまん。
 ダンスをならって一週間やで、まんだ、いくらなんでも踊らん。
 こんねおもたい物ぁいくらなんでも持たん。
 うちの子ぁまんだ幼稚園やで、漢字をいくらなんでも読まん。
 この鉛筆削りゃあ、十年も使っとるで、いくらなんでもきれいにけずらん。
 この部屋ぁあいくらなんでも百人しか、収容せん。
 いくらなんでも人間はそらを飛ばん。
 いくらなんでもペンギンもそらを飛ばん。
 こんねぎょうさんは、いくらなんでも食べん。

内的条件可能
 入院してまったもんで、学校にゃ、いくらなんでもいかん。
 足を骨折しとるもんで、いくらなんでも、はしらん。

状況可能
 今日ぁいそがしょうて郵便局にいくらなんでも行かん。
 この魚ぁ骨がおおいもんで、いくらなんでもたべん。
 時間がないもんで、いくらなんでもいかん。

心情・一人称・現在
 ラブレターなんてはずかしょうていくらなんでも書かん。
 夜の墓なんてこおうて、いくらなんでも行かん。

心情・一人称・過去
 ちいさいころぁ夜中ひとりでゃあトイレに、いくらなんでも行かなんだ。
 
心情・三人称・現在
 佐七ゃ恥かしがり屋やでラブレターなんて、いくらなんでも書かん。

能力・特定主体
 ユウウツなんて字ぁむずかしょうて、いくらなんでも書かん。
 おりゃ海で十メートル以上は、いくらなんでももぐらん。

能力・不特定主体
 いくらなんでも人間はそらをとばん。

能力・特定道具
 この橋ゃあ十トン以上の重さは、いくらなんでもささえん。

内的条件・気持ち
 今日は気分がわるいもんで、いくらなんでも泳がん。
 今日はけがをしとるもんで、いくらなんでも泳がん。

状況
 便箋が無いもんで手紙を、いくらなんでもかかん。

一言で記載しますと、飛騨方言では四段ラ行動詞も含めて、 いくらなんでも〜ぬ(否定)、の 言い方が可能でしょう。
       不可能
四段 書く  いくらなんでもかかん
四段 刈る  いくらなんでもからん
上一 切る  いくらなんでもきん
下一 練る  いくらなんでもねん
カ変 来る  いくらなんでもこん
サ変 する  いくらなんでもせん
可動 読める いくらなんでも読まん

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