大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 文法

飛騨方言の人称代名詞

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飛騨方言における人称代名詞は
 私=わし(ぃ)、おり(ぃ)、貴方=わり(ぃ)、彼・彼女=あり(ぃ)、誰=だり(ぃ)
の五種類があるのみで、大変にすっきりとした飛騨俚言です。 飛騨俚言"わり"は、実は宮崎県高千穂町俚言としてもヒットし、同意でした。 由緒ある古い言葉である事がわかります。 ところが、あり(ぃ)、だり(ぃ)についてはネット情報がないようです。 "あの人は誰ですか?(=ありぃはだりぃや?)"という飛騨方言の言い回しは超希少価値があるものと確信します。

飛騨方言の特徴ですが、宮崎県高千穂町と同じく、第二人称に われ が変化した わりぃ が使われる事でしょう。 これは河内弁の"われ何やっとんじゃ。"に通じます。 実は第一人称と第二人称はあれこれ、入れ替わってきたという古語の歴史があるようです。 勿論、現在でも共通語において"ぼくおりこうさんね。平仮名読めるの?"といいます。 また大阪方言でも"自分なにしてんねん?(=あなたなにしてるの)?"という表現に見られます。

飛騨方言の第二の特徴ですが、中高年以降の年代においては、女性だてらに 第一人称に 俺 を用いるのが普通です。

これら人称代名詞の発音ですが、発音は明瞭、アクセントはわりぃのみ第一音、他は第二音です。 若し わりぃ の 第二音にアクセントがありますと、飛騨方言では、悪い という意味になります。 例えば書き言葉では”わりぃにわりぃ!(=貴方に悪い!)”となってしまいます。 どのように表記したらよいのでしょう。 わぁり では、なんともはや他の人称代名詞との整合性に欠けてしまいます。 悩んでいます。
人称代名詞対比表 <<共通語(=飛騨方言)の形式>>

第一人称(男性単数)
      わたし、わたくし、わし、
   わがはい、せっしゃ等(=わしぃ)、 
      ぼく、おれ、てめえ、じぶん等(=おりぃ)
第一人称(女性単数)
      わたし、わたくし、わし、じぶん等
      (=わたしぃ、わしぃ、おりぃ(中高年以降))
第一人称(男性複数)
      わたしたち、わたくしたち、わしら、
   われら、せっしゃら等(=わしぃだち、わしぃら) 
      ぼくたち、 おれたち、おれら、じぶんら等
      (=おりぃだち、おりぃら)
第一人称(女性複数)
      わたしたち、わたくしたち、あたしら等
      (=わしぃだち、わしぃら、おりぃだち、おりぃら)

第二人称(男性単数)
      あなた、きみ、おまえ、そち、そなた、
      そのほう等(=わりぃ)
第二人称(男性複数)
      あなたたち、きみたち、おまえら、そちら、
      そなたら、そのほうら等(=わりぃだち)
第二人称(女性単数)
      あなた、きみ、おまえ、そち、そなた、
      ねえちゃん じぶん等(=わりぃ)  
第二人称(女性複数)
      あなたたち、きみたち、おまえら、そなたら、
      ねえちゃんたち、 じぶんたち等(=わりぃだち)  

第三人称(男性単数)
      かれ、あいつ、そいつ、やつ等(=ありぃ)
第三人称(女性単数)
      かのじょ、あいつ、そいつ、やつ等(=ありぃ)
第三人称(男性複数)
      かれら、あいつら、そいつら、
   やつら等(=ありぃだち)
第三人称(女性複数)
      かのじょら、あいつら、そいつら、
      やつら等(=ありぃだち)

疑問代名詞、不定称(単数)
      だれ、どなた、どいつ等(=だりぃ)
疑問代名詞。不定称(複数)
      だれさまがた、どなたら、
   どいつら等(=だりぃだち)

参考 

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