大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 文法

指示代名詞

戻る

飛騨方言とて日本語です。近称・中称・遠称・不定称などと呼ばれる3系列を使い分ける体系(コレ・ソレ・アレ・ドレ) には変わりありません。ただし、人称代名詞と同じく、"れ"の音のかわりに"り(ぃ)"を用い、
"こり(ぃ)"、"そり(ぃ)"、"あり(ぃ)"、"どり(ぃ)"
となります。 発音は明瞭、アクセントは四者とも第二音です。

つまり人称代名詞の第三人称(男性)、人称代名詞の第三人称(女性)、指示代名詞・遠称の三者が共に "あり(ぃ)"で同一であるため、例えば"ありぃのありぃ"といっても 彼の彼女、彼の帽子、彼女の彼、彼女の帽子、帽子の彼、帽子の彼女 の例のごとく、文脈により、 六通りの意味になります。 また、分脈により、彼のお父さん、彼女の妹、テレビのスイッチ、の意味となる事もありましょう。

指示代名詞+助詞の活用を列挙し、あくまでも私見として表記法をお示しします。
       これ     それ     あれ    どれ    
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
〜が  −> こりゃ    そりゃ    ありゃ   どりゃ   
〜さ。 −> こりぃや。  そりぃや。  ありゃや。 どりゃや。     
〜だ。 −> こりぃや。  そりぃや。  ありぃや。 どりぃや。 
〜と  −> こりぃと   そりぃと   ありぃと  どりぃと
〜な、 −> こりゃな、  そりゃな、  ありゃな、 どりゃな、 
〜なあ、−> こりゃなあ、 そりゃなあ  ありゃなあ どりゃなあ 
〜に  −> こりぃに   そりぃに   ありぃに  どりぃに  
              こりぃね   そりぃね   ありぃね  どりぃね  
              こんね    そんね    あんね   どんね   
〜の  −> こりぃの、  そりぃの、  ありぃの、 どりぃの、 
       こりぃん   そりぃん   ありぃん  どりぃん  
〜は  −> こりゃ    そりゃ    ありゃ   どりゃ   
〜へ  −> こりぃへ   そりぃへ   ありぃへ  どりぃへ  
〜を  −> こりぃ(を) そりぃ(を) ありぃ(を)どりぃ(を)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
こいつの家という意味で"こりぃんどこ"と発音する場合は、アクセントは平坦のようです。 あいつの家という意味で"ありぃんどこ"と発音する場合は、アクセントは"り"になります。

注目して頂きたいのは目的格、"〜を"ですが、飛騨方言では、どうも明瞭に発音されず、また 明らかに省略される場合もしばしばであると思います。 例としては
(騒々しい居間で)"ありぃやれ、こりぃやれって、なんてった(=何と言った)?おりゃ聖徳太子様ゃないんやで、いっぺんにゃできんぞ。 あっ、わかった、かにな。ラジオ消して、電話とれってがよ。"

ページ先頭に戻る