飛騨方言においては第二人称に、わりぃ、を用いるのが特徴でしょう。
勿論、共通語のわれ(我)に相当します。
しかしながら誰彼同士で自由に使用できる代名詞ではなく、明らかな使用制限事項があります。
ひとつの大切なルールは目上の人に対しては決して用いてはいけないという事です。
言い換えれば、自分の性がどちらであれ、相手の性がどちらであれ、目下の人に対しては
用いてかまいません。
さて目上・目下の関係の定義ですが、年功序列及び同世代なら男子が目上です(女の衆、かにな)。
また同世代同士であっても、男子同士では用いてよいのですが、女性同士ではまず用いられないでしょう。
女性は同世代同士であっても一歩譲るという美意識が働いているのです。
また、わりぃ、に対極する第二人称代名詞、つまりは一歩譲って使用する代名詞は、あんた、でしょう。
そして代名詞・あんた、の場合はわりぃ、と異なり使用制限事項は無いといってもよいでしょう。
年功序列及び同世代なら男子が目上という規則を無視して校長が女子生徒に、あんた、といっても
差し支えないわけです。むしろ、女子生徒にわりぃ、という校長は威高々、あんた、という校長は
やさしい先生ともいえます。
女性が用いる場合ですが、誰に対しても、あんた、を用いるのが無難です。
夫にすら、同級生女子にすら、わりぃ、を用いることはないでしょう。
その点、男性は気軽に、わりぃ、を使用します。気の置けない友達同士では、わりぃ、を使用するのが
当たり前です。否、むしろ、あんた、を使用する事は不自然そのものです。
また老人男性は誰彼に対しても、わりぃ、を用いるのがよろしいでしょう。
ただし自分よりも更に年配の人に対してはやはり、あんた、を用いるのが自然でしょう。
以下、ぶっきらぼう過ぎるような気もするのですがルールをお示ししますと、、
老人男性が
老人男性に−>わりぃ
伴侶に−>わりぃ
年下に−>わりぃ
老人女性が
老人男性に−>あんた
伴侶に−>あんた
年下に−>わりぃ
男子が
老人男性に−>じいさま、あんた、そこ
老人女性に−>ばあさま、あんた、そこ
伴侶に−>わりぃ
同輩に−>わりぃ
年下に−>わりぃ
女子が
老人男性に−>じいさま、あんた、そこ
老人女性に−>ばあさま、あんた、そこ
伴侶に−>あんた
同輩男性に−>あんた
同輩女性に−>あんた
年下に−>わりぃ
そこ、というのはそちらのお家、という意味で用いられます。