飛騨方言の、こそあど言葉、の特徴としては、ひとつには、
こり・あり・そり・どり、などで活用する事が
ありましょう。但し、河合村誌の記載のごとく北飛騨に
限られる言い回しかもしれません。
筆者自身は普通にでてくる言葉がやはり、これ・それ・あれ・どれ、
及びせいぜいがその撥音便です。
ところで飛騨方言における指示代名詞の
もうひとつの特徴が、〜だけ、が代名詞に接続する場合に短呼化
が生ずるという事でしょう。これだけ、という意味で、
こだけ、というのです。以下、そだけ、あだけ、どだけ、
という事も多いのです。
更には濁音化して、こだげ・そだげ・あだげ・どだげ、
という事も多いでしょう。
富山方言に同様の言い回しがあり、
中世あたりに富山方言が飛騨方言に影響を及ぼした可能性が
ないでしょうか。
話かわって、こげん〜、こげな〜、の言い回しは
博多方言の特徴でしょうが指示代名詞に後続する
助詞等すべてで短呼化があり、
極めて生産的(=例外がなく、徹底している)のようですね。
ところが、飛騨方言では、後続する言葉が、〜だけ、の
場合にのみコソアド四種で短呼化が生ずるようです。
手元の国語辞書当を片端からみますと、
ほんの一例が以下の如くでした。
これを
これに
これへ
これこそ
これや
これは
これとは
これから
これかれ
これきし
これきり
これくらい
これしき
これだけ −−>こだけ
これほど
こればかし
こればかり
これっぽち
これの
これまで
これみよがし
これら
音韻学の書をあれこれ読みますと、
以上の音韻について数十種類が記載されていますが、
それをここに列挙する事は衒学的であり、無意味でしょう。
結論は簡単、飛騨方言において、これだけ−>こだけ、
の音韻変化があったのは単なる偶然でしょうね。