大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 

ねぐさる(=村祭りに雨が降る)

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僕:表題だか、これは大西小学校校区でしか通用しない言葉のようだ。
君:子供達の戯言かしら。
僕:いや、そうではない。老若男女、誰もが用いる。江戸時代の言葉に、方言は手形、がある。つまりは自ラ五(自動詞ラ行五段)「ねぐさる根腐」が通じれば、大西村界隈の出身者という事。具体的には、隣接する小屋名と柳島を含め、三村の出身者である、という事。
君:ほほほ、ラングでもパロールでもなく、列記とした飛騨方言ね。
僕:土田吉左衛門「ひだの言葉」には「ねぐさる(=腐る)」の記載があるし、小学館・日本方言大辞典にも散見される。大西村の自ラ五「ねぐさる根腐」は立派な俚言というわけだ。隣村を「ねぐさり祭り」と揶揄する事は立派な卑罵表現という事になる。
君:確かに、村祭りはカラッと晴れて欲しいわよね。
僕:今でもよく覚えているエピソードを紹介しよう。
君:ええ。
僕:村にひとつ年下の従弟・登志彦がいた。私が大学に進学した翌年に彼も同じキャンパスに進学してきた。
君:それで。
僕:名古屋と高山じゃ遠いから、二人とも村祭りの日には帰省しなかったんだ。二人で、飲み屋にいった。名古屋は雨だった。私が彼にぽつり、「祭りがねぐさったのかな?」。彼がすかさず、「左七兄ちゃん、今の言葉、懐かしい。だめ。ホームシックになってまって。やはり帰省したほうがよかった!」「登志彦、俺もや。」、そして二人は笑って乾杯。
君:なるほど。故郷の訛り懐かし停車場の・・、大都会で同じ村の出身者が二人で言葉に誘発されて望郷の念に駆られたのね。
僕:学生だからなあ。帰省するといっても鈍行以外に手段無し、高山線は単線だから、鈍行はやたらと駅での急行待ち合わせ時間が長いんだよ。
君:ほほほ。
僕:それに、名古屋から名鉄で鵜沼まで、国鉄高山線に乗り継いで行くなら時間の短縮になるが、高山線は岐阜駅経由、つまり濃尾平野で大迂回するが、運航料金は名鉄に乗り継ぎ無しの方が多少、安い。
君:学生なら迷わず安い料金を選択。
僕:その通り。特急に乗り、帰省するのは社会人になってからだった。
君:自虐的な言い方ではなく、隣村の祭りが雨なら、その隣村の子供に向かって、「やーい、ねぐさった!」とからかうのね。ほほほ

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