大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 平安時代の飛騨方言

撥音便

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私:久しぶり、大胆にも平安時代の飛騨方言に思いをはせてみたい。
君:ほほほ、仮説に次ぐ仮説、完全に間違っている可能性は無きにしもあらず。
私:ははは、何とでも言え。こういった場合の為に数学で言う「予想」という言葉があるんだよ。フェルマーの予想なんかが有名だな。なるほどそうらしい、と叫ぶのが「予想」。予想は外れてもおとがめなし。予想は無数にあるかも。これは左七の予想。ぶっ
君:いいから、平安時代に飛騨方言に撥音便があったのでは、という予想ね。
私:そう。
君:根拠を示してください。
私:「へびがはっている」というのを「へんべがはんどる」と言うんだよ、飛騨方言では。
君:「へび・へんべ」は良しとして、「はっている・はんどる」について説明してね。
私:はいはい、「はんどる」は「はんでおる」という事で飛騨は指定の助動詞「ゐる・をる」では西側。
君:それが平安時代からかも、と言いたいのね。
私:あり・をり・はべり・いまそかり。「はんでをり」は平安の言葉でしょ。「はみてをり」の撥音便じゃないのか。こんなのが飛騨にあるのは飛騨工が京の都から撥音便を飛騨に持ち帰ったからじゃないの?
君:飛騨工の人数が問題だわよ。
私:租庸調の律令制の時代、奈良・平安にかけて人頭税として各村々から男ひとりずつ、これが都と飛騨の出張を繰り返した。延べ数十万人といわれている。当時の事だぜ。奈良時代の日本の人口は約450万人、平安時代(900年)は約550万人。意味、わかるよね。
君:そりゃあ影響があるでしょ。
私:とどめの一発。奈良市に飛騨町というのがある。同町名は岐阜県の飛騨という地名のルーツなんやて。
君:なるほどね。
私:それはともかく、平安というか、古代にはヘビは「へみ」だった。語源説は多いが、そのひとつが他マ四「はむ食」、つまりヘビはハミからヘミに音韻変化したのでは、というのが左七の古代飛騨方言ロマン。
君:更には撥音便でヘミからヘンペになったのでは、と仰りたいのよね。
私:その通り。ところで・・・「べ」ってどういう意味?
君:苗字に多いわね。織部、堀部、森部・・つまり人の意味かしら。
私:そうだね。ただし・・・厳密に言うと「ぶ部」とは書物の分類、転じて一般に内容によって分類されたものを言う。つまりは職域。
君:ほほほ、つまりは「へみべ」は這う事を職域とした動物。
私:まあ、そんなところかな。平安時代前後の事でしょう。撥音便の歴史に移ろう。
君:平安時代ね。
私:まさにその通り。平安時代になり一拍を占める音設鼻音(syllabic nasal)として位置づけられる事によって、はじめてその位置を獲得した。つまりは奈良時代に撥音便は無い。これが日本語の歴史。
君:ほほほ、だから都直輸入の飛騨方言においては平安時代から撥音便があったのでは、というのが左七の主張ね。
私:内省すると飛騨方言では「へんべがはんどる」、つまりは「へびがはっている」では絶対に飛騨方言じゃないんだよう!
君:飛騨で平安に撥音便。つまりは飛騨工が都のナウい言い方を故郷に持ち帰ったのでは・それが現代まで脈々と伝承されたのでは、と言いたいのね。ほほほ

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