大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

同音異義語と同音衝突

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私:今日も言語学、外国語と飛騨方言の接点という事で。
君:ほほほ、外国語といっても英語、でしょ。
私:まあ、そう言いなさんなって。さて表題だが二者の意味の違いは、どういう事だい。
君:同音が衝突ね、なんだか似たような響きよね。でも、違うんでしょ。
私:ははは、勿論だ。答えは、同音衝突 = homonym clash。
君:・・、あ、なるほどね。同音異義語衝突と言わないから問題が作れたのでしょ。
私:その通りさ。同音異義語にはクラッシュ(=衝突)するものとしないものがある。
君:クラッシュしない、と言えば、雨・飴、とか。
私:おいおい。そりゃ異音語だぜ。例えば、風・風邪、が同音衝突しない日本語の例さ。発音はアクセントを含め、完全に同じふたつの言葉についての議論だ。
君:失礼、英語の定義も同じよね。
私:まあね、訳語みたいな日本語だからね。
君:じゃあ、飛騨方言のお話を。
私:早速だ。飛騨方言のセンスにあえば○、合わねば×で。
おりゃ佐七や。○
おらあ佐七や。○
わりゃ吾作や。○
わらあ吾作や。×
これをどう思う。
君:飛騨方言は自称は、おり、対称は、わり。でも自称が、おら、の事もあるわね。でも対称を、わら、とは言わないわね。何故かしらね、わからないわ。
私:お忙しい方の為に、答え、やはりこれは同音衝突が理由である。もっとも生まれもお育ちも旧高山市街、つまりは町のおぼっちゃん育ちのおかたならピンとこないのも無理はないでしょう。農家の生活にかかせぬ最も身近な材料・わら・藁と同音異義語であったため、意味の混同が嫌われて、対称・わら、は死語、つまりは幻の言葉になってしまったに違いない。
君:なるほど、十分に納得がいくわ。おら、は同音異義語がないから意味の混同など起きるべくもなく、安心して使える。クラッシュすべき相手がそもそもいない、という事だったのね。藁は吾作、ではなるほど意味は通らない。でも吾作が藁細工の名人で、藁細工なら吾作と言う意味ならば・・わらあ吾作や。○
私:ははは、そうだね。大正解だよ。さて、元々はわれ・我、という言葉であった対称を、わり、に変化させたのは飛騨人の偉大な発明であったと僕は思う。飛騨方言では対称・我、は生活重要語・藁にクラッシュされて、わり、に変貌した。
君:なるほどね、折角だから英語の例は?
私:比較言語学という学問分野の話題だそうで、いくらも例があるのだろうね。queen/quean などというのがあるよ。
君:前者は女王、後者は、どれ辞書では、あばずれ。とんでもない意味の違いね。
私:よくは知らないが、古代の英語では後者はクゥェアーン、と言っていたらしい。中世に-ea- をすべて、イー、で発音するようになってしまった結果、とんでもない同音異義語の対になってしまって、結局は後者は死語になってしまったそうだ。quean はqueenにclash された。
君:なるほど、英語死語辞典ね。もっともねえ、queenの意味がquean に近づいたのかも。どの職場にも女王様って・・・・いるでしょ。やったわ!今日は私がオチを書いた!

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