大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 

高低アクセント

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僕:まずは動画をどうぞ。

君:アナウンサーとして「話す」指導歴も40年近くというから大ベテランのお方よね。
僕:そうだね。僕がこのサイトを開始したのが2004年だったか、当時はユーチューブは無かったから、話してなんぼの方言サイトだが、全ては文字の世界だった。まさか、令和の時代にこんな、生き生きとした方言サイトを運営できるようになろうとは、僕自身が日本でのユーチューバーの老舗だった事もあったのに。当時はオートバイにはまっていて、ひたすら全国を走ったインカム動画をアップしていた。
君:ほほほ、エンジン音の世界ね。
僕:その通り。さて、ご紹介のサイトだが、昨年に発足だね。僕と同世代のおかただろう。僕も医者になって43年になる。自身をベテランだと思った事は一度もない。さて「レポーター」が頭高ではなく実は中高である事が凡ミスといったところだが、お互い様にてご愛敬。動画に触発されて子供の頃によく言葉遊びをした事を思いだしてしまった。
君:例えば。
僕:「キシャのキシャがキシャでキシャした」。なんとこの四つの「キシャ」だが、NHK日本語アクセント発音新辞典2016年版によるとすべて頭高だ。
君:答えは。
僕:「貴社の記者が汽車で帰社した」。もっとも、天下のNHKに向かって物申すというのも少しばかり気がひけるけれど、「汽車」は飛騨方言では普通は尾高だと思う。然もNHK同辞典1998年版では「汽車」は頭高と尾高の両論併記となっている。面白いのが三省堂のアクセント語辞典2006年版で「汽車」のアクセントは尾高、ただし新しいアクセントとして頭高がある、との記載。つまりはアクセント学でもなんでもそうだが、まずは常識を疑え、最近の国研ユーチューブを観ても、三拍名詞は尾高から平板に向かっている傾向というのが大方の研究者のご意見だろうが、実はこのように尾高・平板から頭高に向かっている名詞もある、という事なんだ。がはは
君:ほほほ、更に言いたい事があるのでしょ。
僕:ああ、勿論だ。こういったチョッととした情報を得て、すぐに僕は妄想が膨らんでしまうんだ。要は目新しい言葉は頭高のアクセントで始まるが、時代と共に使われれば使われるほどアクセントは平板に向かう。これがアクセント学の常識。ところが「汽車」なんて現在、日本のどこを走っているというんだい。大井川鉄道くらいでしょ。つまりは日常生活語としては死語になりつつある。だから・・・ふふふ
君:つまり、久しぶりに使う言葉「汽車」は頭高になってしまう。
僕:なんだわかっているじゃないか。ついでに三歳の孫の事を話そう。今はすっかりトミカと新幹線に夢中だが、昨年まではきかんしゃトーマスだった。彼の今後のアクセント変化を見つめ続けていたい。彼を取り囲む大人で、こんな事に興味があるのはヒゲじいちゃんの僕だけだろう。
君:格助詞、助動詞でも、あなた言いたい事があるわよね。
僕:ふふふ、その通り。「キシャのキシャがキシャで」までは実にファジーな内容、ところが「キシャした」はサ変動詞。つまりは語幹となる名詞は帰社で決まりだ。
君:でも最近の若者言葉は何でも有りよ。例えば「お茶する」。これでいけば「記者する」は「取材する」、「汽車する」は「移動手段として汽車に乗車する」とか、使わないかしら。
僕:そうだね。でも、それでは話がややこしくなるから、とりあえずは「帰社する」は確定としておこう。ところで上記の三つのアクセント辞典に「帰社」の記載がないのが痛い。さすがに頭高「帰途」の記載はこれら三つの辞典に記載があったので「帰社」も頭高で決まり。さあ残り三個の「キシャ」だが、まずは主語の確定がキモ。「帰社する」のは「記者」に決まっているから「記者が帰社した」の漢字も自動的に確定する。「貴社で帰社した」は有り得ないから「貴社の記者が汽車で帰社した」で確定。次いでだから英語でも遊ぼう。Give a little space between king and and and and and queen.
君:and が五個。とてもじゃないけれど英語に見えないわ。
僕:「王様と御妃様」と書こうと思って、つまりは「King And Queen」と書こうとしたんだよ。ところがスペースを入れなくて「KingAndQueen」と書いてしまったんだ。それを見た人が King と And そして And と Queen この両方にスペースを入れてください、という命令文だ。Give a little space between (King and And) and (And and Queen). つまりは何のことはない, Give a space between thing-A and thing-B, という命令文だ。
君:なるほど。GIVE A LITTLE SPACE BETWEEN --pausing-- King & And --pausing-- AND --pausing-- And & Queen. というわけね。英語はストレスアクセントだから、とりわけ--pausing-- AND --pausing-- をゆっくり強めに話せばいいのだわ。ほほほ

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