大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 

トーンアクセント

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僕:方言ユーチューバさんが大活躍する時代になって、なにせおらが方言には相当に自信のある方々ばかり。ネイティブの方々の方言をお聞きするのは本当に楽しいね。
君:最近、あなたが使うキーワードが「話してなんぼの方言学」。
僕:そうなんだが、「聞いてなんぼ」と言い換えたほうがいいかもしれない。
君:あなた自身が発信する事は無いのね。
僕:僕の仕事はそれこそ「話してなんぼ」だが、要点をわかりやすくお伝えする事と、キーワード、特に病名は話すだけではなく、必ずメモをお渡ししている。
君:ところでトーンアクセントとは。
僕:その前に、多くのユーチューバさんがアクセントの事をイントネーションと仰ることが実に多い。あれは是非とも止めていただきたい。まったくの別物。アクセントの意味でイントネーションという言葉をお使いである事は容易に理解できるが。トーンアクセントをわざわざ今夜の話題にするのは、日本のある方言に関係する。
君:わからないわ。
僕:鹿児島方言。同方言が大変に聞きにくく、外国語のように聞こえる主な理由といってもいい。
君:全国の方言が、共通語も含めて、非トーンアクセントで、ひとり鹿児島方言のみがトーンアクセントというような意味かしら。
僕:まあ、そんなところ。その前に日本語のアクセントと英語のアクセントという事を話題にしよう。
君:今まで何回も出てきたわよ。日本語はピッチアクセント、つまりは高低アクセントで、英語はストレスアクセント、つまりは強弱アクセント。
僕:その通り。所詮が日本人でいらっしゃるところの英語教師の方々に正しく発音できる人がどれだけおみえか、はなはだ疑問。新幹線の英語アナウンス等にして然り。
君:それはいいからトーンのお話にして。
僕:ほいきた。そもそもが世界の諸言語のアクセントはトーンアクセントか非トーンアクセントかに二分される。非トーンアクセントはまた二分され、ピッチ(日本語)か、ストレス(英語)か、に二分される。トーンと非トーンを分けるキーワードがある。なんだと思う。
君:失礼ね。言語学の初歩。「どれか」がトーンで、「どこが」が非トーンよ。
僕:さすが。その通り。トーンとは複数のアクセントパターンがあって「どれか」によって意味が変わるという事で、中国語の「マーマーマーマー(= ママが馬を叱りましたか?)」が有名だね。

日本語も英語もアクセントパターンが「どれか」は一切、関係なく、高低の切れ目、あるいは強弱の切れ目が該当する音節のどこの音韻に存在するか、だけが重要。つまりは日本語は文章のどの位置にあろうが「パタ\ーン」で中高アクセントは不動であるし、英語は pat'tern で first syllable にアクセントがあり、これも不動。
君:鹿児島方言について簡単に説明してね。
僕:うん。よく引き合いに出されるのが「花」と「鼻」の違いだが、名詞に各種の助詞がついて文節を構成するが、どんな格助詞が付こうが文節単位で平板アクセントなら「花」の意味で、文節単位で中高アクセントならば「鼻」の意味。「花」の名詞そのものに固定されたアクセントの滝があるわけではなく、「鼻」にして然り。つまり一つの名詞が活用によってアクセントがコロコロと変わる。これが鹿児島方言だ。
君:関西の人も東京の人も、どなたもまねのできない芸当よね。
僕:ただし、救われる点がひとつある。
君:とは。
僕:中国語・鹿児島方言はじめ、トーンアクセントは音の高低でパターン認識している。従ってトーンアクセントとピッチアクセントを合わせて広義のピッチアクセントと考える事もできる。
君:という事は。
僕:そう。中国語・鹿児島方言を含めた日本語は広義のピッチアクセント体系。共通項は音の上げ下げ。ただし前者は「上げ下げパターンはどれか」のアクセント体系であり、飛騨方言はじめ鹿児島方言以外の日本語は「下がる部分は語のどこか」のアクセント体系。それに対し英語、ドイツ語はストレスアクセントであり、東洋の言語にとっては極めて異質のアクセント体系。
君:つまりは。
僕:知り合いの日本人でタイ語・ベトナム語を話すのがいる。両語ともピッチアクセントだそうだ。やはりね。
君:つまりはアジア諸言語は広義のピッチアクセントなのね。印欧語がストレスなのよね。
僕:まあそんなところだ。どこまで話してもきりがない。このへんで。お休み。そしゃ。
君:一日一話、あんさまもまめやな。そしゃ。

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