大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

昭和天皇のアクセント

平成の御世も長いので昭和天皇のアクセントを知らない世代が増えていますが、この昭和天皇の独特のスピーチは実は当時に米国人にもよく知られていて、その昔、米国在住の時に質問をされる事がよくありました。日本人のお前に聞きたいと質問されましたが、どのように独特なのか、日本人自身は天皇のそのスピーチをどう思っているのか、等々です。私自身は米国人の心にまで昭和天皇のお言葉が影響を及ぼしている、という事実が驚異でした。

どのように独特なのか、という質問ですが、私の答えは、アクセント・イントネーションが独特でこれは天皇独特であり、つまり個人として独特であり、なかなか誰も真似られるものではない、というものでした。日本国民はそのスピーチをどう受け止めるか、という質問には、一種荘厳な感じがして、皆が天皇のその口調を心から喜んでいる、と答えています。

彼は日常的にそのように会話しているのか、と質問する米国人もいたのです。私の返事は、以下の通りです。
天皇の日常会話を私のような一般国民がうかがい知る事は困難であり、佐七も知らない。我々日本国民が天皇の肉声に接する事ができるのはマスコミを通じたスピーチのみ。天皇は多くの方と接し、普通に話しておられると思うが、マスコミは連携してそれを報道していない。ただし、私自身はNHKという公営放送の確かニュースの時間に、天皇の映像とともに、そう?それは大変ですね、というたった一言の会話言葉をたまたま聞いた事を昨日の事のようによく覚えている。逆説的であるが、それこそ私にとって天皇の日常語を聞いた生涯忘れえぬ瞬間であった。そしてそれは極めて普通の言い方であった。だから思うに、独特の抑揚がある天皇のスピーチは天皇ご自身のお考えからによる国民向けのサービスなのではないだろうか。
この説明に私と会話をした全ての米国人が納得しています。そして、ほうなるほど、やはりスピーチの天才という事だね、と。私の説明はなおも続きます。日本語には人称代名詞が実に多い。ざっと数十ある。天皇ご自身が、私、という場合に、朕・ちん、という言葉を使うのだ。但し、実は一般名詞であり、ルイ14世 (フランス王)がのたもうた言葉、朕は国家なり、は世界史の教科書に記載されている、と。