大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム |
服部四郎 |
私:国研の木部暢子(のぶこ)先生の講義を発見したのでご興味あればどうぞ。つい先月の講義だよ。 君:女ボス。重鎮よね。 私:昨年に出版された三省堂・明解方言辞典の著者。私より二つ年下。講義に出て来る服部四郎先生について語りましょう。 君:これまた方言学の神様。国学よもう一度、日本のアクセント学の中興の祖ね。 私:それとアルタイ語の研究。 君:元東大教授。言語学者。 私:東条操先生の弟子。そして服部先生の弟子が金田一春彦先生。服部・金田一にてアクセント学の基礎ができる。 君:東条操先生と言えば方言区画論ね。 私:そう、そこへ服部・金田一のアクセント学が加わり、方言学が花開く。 君:皆様の共通項が無いかしら。言語学の天才という点以外に。 私:大事な点がある。フィールドワーク重視。実際に現地に趣き、自分の耳で聞いて、正確に記載し、考える。現地調査で服部先生にかなう学者はいない。アジア各国の言語をお調べになって、あまつさえ国際結婚しておられる。服部先生は三重県亀山市のご出身だが、亀山市歴史博物館は仕事道具たる遺品のテープレコーダを所蔵する。 君:東京と京都のアクセントの違いが木曽三川のひとつ、揖斐川にある事を突き止めておられるけれど、先生が東京帝大の学生さんだった時の事よね。 私:昭和四年の春休みの事だったそうだ。 君:そもそもがアクセントに興味をお持ちになったきっかけがあるでしょ。 私:あるなんてもんじゃない。おおありだ。幼いころから言葉にご興味を持たれていたのだろうが、旧制中学の時に東京ご出身の英語教員・野鷹二先生があまりにも立派な東京アクセントで教壇にお立ちになるや、亀山育ちつまりは関西アクセントの服部少年はすっかり野先生のファンになってしまったからだ。 君:歴史秘話みたいな感じね。方言に興味を持つ人は田舎出が多いという事のようね。 私:僕の出身もホント、田舎だからなあ。高山市とは名ばかりで戸数30ほどの寒村だ。幼いころから都会の言葉に憧れていたよ。 君:東京・京都にアクセントの違いがある事くらい、誰でも知っている事で、でもトコトン突き詰めようという人は少ないわね。 私:先生がうらやましいよ。 君:どうして? 私:春休みに好きな事が出来ただなんて。 君:ほほほ、あなたはバイトに明け暮れていたのかしら。 私:そんなところだ。でも、卒業の年の夏休みは切なかったな。 君:どうして? 私:人生の最後の夏休みだ。 君:社会人になると忙しいわね。定年が人生の区切りね。 私:僕の仕事には定年が無い。一年中、働いている。息抜きにこうやって記事を書いている。 君:学問には休みが無くて当然。仕事を天職と思えばいいのよ。 私:思った事ないね。道を間違えた。方言が面白い。三教科では国語が苦手だったのに不思議だ。今は角川古語大辞典全五巻や日葡辞書を夢中で読んでいる。逆に数学問題を見ると頭がクラクラする。 君:あなたの方言のきっかけは? 私:片思い、って言うのかな。或る女性への思い。 君:木部先生に?まさか。嫌われる事、間違いなし。ほほほ |