大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 方言学<

ブラキストン線 Blakiston Line (津軽海峡線)

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私:当サイトは基本的には国語学・言語学の立場から極めてまじめに方言について語る場でありたいが、アマチュアである事をいいことに、少しは娯楽性を交えて運営していきたいと考えている。
君:だから方言学用語「南北対立」におけるブラキストン線 Blakiston Lineって何を言いたいのか、賢い中学生なら誰だって気づくわよ。
私:そうだね。線そのものについては確か中学理科で学んだかと思う。別名が津軽海峡線だ。
君:日本を津軽海峡を境に南北でわけると北海道の方言と青森以南の諸国方言では相違点がある、とでもおっしゃりたいのね。
私:その通りだ。ブラキストン線は明治政府が招聘したトーマス・ブラキストンが北海道に生息する動物と本州以南に生息する動物の違いに着目した。函館山には碑が建てられている。生物学上の貴重な発見と言ってもよい。
君:方言学では?
私:水が氷る事を北海道では「しばれる」と言うが、本州以南では「しばれる」が使われる事なく、裏日本では「しみる」、表日本では「こおる」が用いられる。だから北海道は「しばれる」地方で、その他の地方は「しばれ」ない地方なんだ。だから「しばれる」対「しみる・こおる」の境は津軽海峡、つまりはブラキストン線。
君:ブラキストンは氷河期が過ぎて津軽海峡を動物が行き来出来なくなった事を見抜いたのだし、北海道に人が入植して、全道に「しばれる」が広まったのは明治だわよ。そんな事よりもアイヌ語と日本語を分離するのがブラキストン線とおっしゃるべきよ。氷河期に日本人はいたのだし。
私:確かにそうだね。金田一京助先生は偉大だ。いや、ここは日本中の方言について考察する場なので、僕は「しばれる」に拘りたい。ついでながら南北対立において方言境界たるブラキストン線があるとすれば、伊豆七島にも南北境界たる「万葉線」があるのではないだろうか。
君:伊豆大島はじめ、万葉方言と呼ばれているから熱海と大島の間には「万葉線」があるとでも言いたいのね。フェリーで小一時間、ほんのちょいの距離だわよ。熱海の対岸に大島は良く見えるわよ。
私:でも、万葉時代に小舟で行き来するのは大変だっただろう。流刑地になってた位だから。それに伊豆七島は太平洋に向かって南にすうっと延びているから、伊豆七島の万葉方言を「万葉線」的見地から考えたい。因みに「万葉線」を検索すると富山県高岡市の地方鉄道がヒットする。つまりは方言学の学術語として「万葉線」を提唱したのは僕が初めて、という事になる。今日は歴史的な日だ。これに気をよくした僕は早速に今日・土曜日の午後に日本地図をやぶにらみして、離島を検索し、方言の違いに着目しながら素敵なネーミングでもしてみようかと思う。小笠原諸島はさしずめ、方言学の南北対立的観点からは「世界自然遺産線」によって本土とたもとを分かっているなんてのはどうだ。がはは
君:面白くも何ともないわよ。
私:隠岐の島と本州の島根県にも方言の違いがあるかもしれない。これも南北関係だ。「後鳥羽上皇線」が存在するかもしれない。東西も東京対京阪神の対立ばかりに注目するのではなく、五島列島と九州本土の方言の違いとか、思わぬところに東西対立が存在するかもしれない。題して「天草四郎線」が実は南北に走っていると言うわけだ。飛騨方言と美濃方言の対立、これは南北対立で決まりだな。線の名前は「中山七里線」で決まり。ただし飛騨方言と郡上方言の違いは東西対立だね。これは「せせらぎ街道線」が飛騨高山と郡上を南北に分けていたのか。がはは
君:あなたの村と旧高山市街ですら南北対立があるわよ。
私:確かに。僕の村は表日本だ。高山は裏日本だ。僕の家の裏山は本州の分水嶺だ。気取って英語で行こう。The Great Divide Line. 留学時代を思い出す。The Continental Divide. 一つの水は太平洋に、片方の水は大西洋に。そんな峠があったのさ。
君:よかったわね、飛騨に生まれて。日本の東西南北の真ん中なのよね。
私:ああ、気持ちがいいね。岐阜県、最高。県は日本の人口重心が存在する事でも知られている。
君:重心がじわじわりと東に移動しているのよね。今しばらくは県内のとどまっているでしょうけど。

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