大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 方言学<

鉄道とダムと方言

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ちくま新書に、井上史雄著・変わる方言 動く標準語、があります。有名な方言学者様です。またコンピュータにめっぽう強い方で、しかも全国にメル友多し、現代に生きる言葉の状況を全国の情報提供者からいち早く入手、ただちに解析、グラフ化、早い話が方言地図・グロットグラム、結果を同書にも記載していらっしゃいます。

同書の内容の一部ですが、全国各地の共通語普及率に加えるに、 東京・京都からの鉄道距離、という客観的な数値をグラフ化してあれこれ考察していらっしゃる内容は大変にユニークと言えましょう。更に、クラスター分析・因子分析へと議論は展開されますので、理科系の方々が直感的に方言を理解出来る内容です。

先生が鉄道距離に注目した理由は、明治以来、鉄道距離はほぼ同じ、江戸時代以降の全国の街道に距離にピタリと一致しているという事だそうな。

飛騨を考えて見ましょう。高山本線が一本あるのみ、全通したのはなんと昭和九年ついこのあいだ。それまでは陸の孤島であった飛騨高山、確かに自動車道路は以前からあったものの、共通語普及率は最低、飛騨方言というのは相当のど田舎弁だったのですね。

北アルプス・飛騨山脈を考えて見ましょう。松本と高山はようやく最近になってトンネルが整備されて自動車での行き来が楽になりましたが、未だに鉄道では結ばれていません。そして松本と高山を隔てる飛騨山脈は日本で最大の方言境界線です。糸魚川・浜名湖線という人も多い。佐七ひとりのみが飛騨山脈線と唱え、飛騨の人々は 全員が佐七に喝采を送る。

そして白山から養老山脈にいたる日本で第二の方言境界線を見てみましょう。岐阜県側は越美南線が、そして福井県側は越美北線が同境界線に肉薄しますが、九頭竜川源流あたりを鉄道で結ぶ事はきわめて困難であり、計画は幻です。

白川郷から砺波平野にかけては高速道路が完成した位ですが、将来に鉄道が出来る事などあろうはずもありません。飛騨方言である白川の言葉と越中方言にも超えがたい違いがあります。

ある場所に鉄道を敷くという事は、地形がなだらかであり、古代から人の行き来が多く、方言境界など生じようもありません。考えるまでもなく、当たり前の事。当たり前の事を真面目に難しそうに記載するのが学問です。

そしてここで佐七節。また更には、ダムの数・ダムの規模、などが方言境界の程度を考えるのに役立つでしょう。かつて東洋一のロックフィルダム御母衣ダムがあり、白川方言と越中方言の差は著しいものがあります。九頭竜ダムもまけじおとらじ巨大です。福井方言と郡上方言の差は大きいのです。さて筆者の故郷・大西村は飛騨川のほとりですが、村の上流は、
  1. 久々野(くぐの)ダム
  2. 朝日(あさひ)ダム
  3. 秋神(あきがみ)ダム
  4. 高根(たかね)第1ダム
  5. 高根第2ダム、
なんと五つもの巨大ダムがひしめくダム銀座なのです。つまりは佐七が思う事は、
日本一の方言境界である飛騨山脈は日本の戦後の復興を助けた水力発電、ダム銀座が一番よく似合う。鉄道は似合わない。

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