大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 方言学 |
尾(根)に関する一考察 |
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私:今夜は日本語の音韻を考える上でとても大切な法則・最小語条件にからんで。 君:日本語は二拍を基本とするという音韻則よね。尾根は二拍だから最小語条件に合致するわ。 私:ところでね、俳句とか川柳とか、リズムが大切だよね。小学生でも知っているリズム。 君:575ね。 私:あれは実は888なんだよ。 君:ええ、息継ぎで無拍が生じて合計24拍になるのよね。 私:そう、つまりは575でなくても俳句も川柳も作る事ができる。これって何ていう? 君:字余り。 私:そう、字余り。古池や・蛙飛び込む・水の音。古池があり・蛙が飛び込む・水の音せり。無拍を埋めるとこうなる。 君:そんな事、誰でも知ってるわよ。 私:失礼。早速に本題だが、尾根が昭和の言葉で、屋根が古代の言葉。昨晩はこれに気づいてしまったが、こんな事は誰も知らないだろう。 君:他ならぬ貴方が一昨日まで知らなかったのよね。 私:その通り。「ヲ尾」は上代語なので、つまりは万葉の時代から使っていた。どうして尾根を使わなかったのだろう。最小語条件に反するよね。 君:偉大なる昭和の発明。 私:その通り。上古から江戸時代、いや明治だな、「尾」は実際は「ヲォ」と発音していたに違いない。 君:誰も信じないわ。 私:京言葉などに端的に表れる。 君:例えば? 私:「胃が痛い」は「いぃがいたい」。「血が出た」は「ちぃがでた」。 君:木は「きぃ」、毛は「けぇ」ね。 私:そう。そうやって一拍語は二拍で発音出来て、日本語の最小条件を満たす。 君:なるほどね。 私:ところで方言学において更に大切な法則というものがある。 君:知らないわ。 私:二拍の和語には方言が無いんだ。ヤマ山、カハ川、サハ沢、タニ谷など。日本全国、古代から現代まで音韻の変化は一切、無し。 君:二拍のリズムは余程、言いやすいのよね。 私:そう。段違いに言いやすい。言いやすい言葉は(絶対に)方言が生じない。 君:そろそろ表題のお話にしてね。 私:うん、言いやすさ・聞きやすさという点では「ヲヲ」より「オネ」でしょ。昭和の時代にこれが突然にブレイクしたというわけだ。誰が言い出しっぺなんだろう。気になってしかたない。 君:文献が無いのね。 私:今のところ。僕のライフワークになりそう。ぶっ 君:でも、目星あるんでしょ。 私:へへへ、バレたか。八方尾根なんか怪しいよね。明治まで「ハッポウヲ」だったのじゃないかな。 君:可能性はあるわね。 私:斑尾って知ってる? 君:知らないわ。 私:長野県。妙高の近く。これは四拍だから、最小語条件からすると班尾根にはならなかった。もっとも開山は飛鳥時代で、マンダラホウ曼荼羅峰からの転だそうだが。つまり班尾は後世の当て字。 君:なんだか今夜のお話は迫力が無いわね。 私:これで終わりにしよう。最小語条件はとても大切な音韻則だが、二拍でなくても三拍でもギリセーフです。 君:例を示してね。 私:栃尾と中尾。 君:ほほほ、上宝村ね。まあ、言いやすいわね。歴史は上代かしら。 私:残念ながら両村とも記録に残るのは飛騨国中案内。つまり江戸時代。 君:尾根が昭和の言葉だから栃尾根や中尾根というのは有り得ないわね。 私:ああ、絶対に有り得ない。 君:三拍名詞はざらにあるわよ。 私:人名だね。娘が二人いるが三拍だ。家内も三拍だ。A子も左七も三拍で決まり。人名は三拍が多い一つの理由があると思う。 君:聞かなくてもわかるわ。屁理屈ね。 私:うん、確かに。会話を成立させるのに膠着語たる日本語は人名に格助詞「が・に・を・へ・の」と係助詞「は」の接続が必須。つまり人名+助詞で四拍となり最小語条件を満たすからじゃないのかな。 君:一理はあるけど左七の妄想。ほら二拍×8個で最小語条件よ。つまりはラップ音楽。ほほほ |
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